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「えっ? んむぅッ!?」
またしても、ルイルイに唇を奪われてしまう俺。
や、やめろぉー。
や、やめ、やめてぇー。
やーめーてーっ。
「えっ? んなぁっ!?」
「ねっ、ねぇさんっ!?」
驚きの声を上げてこっちを見るシャノとメイメイ。
そんな彼女たちに見せつけるように、ルイルイは俺の口腔内に舌を入れてくる。
今度はトマトなどない。
俺の丸裸の舌がルイルイの舌に絡めとられる。
そして、あきらかに俺のものではない、ほんのりと甘い味のする唾液がルイルイの口から注がれてきて俺の口の中を蹂躙していく。
いーやー。たーすーけーてー。
「ぷはっ」
ようやく解放された時には、俺はもうぼろ雑巾みたくなっていた。
うう、もう、お婿さんにいけない。
「なっ、ななななななな、なぁっ!? なによその子っ!? っていうか、あたしのトーノになにしてんのよぉっ!」
ルイルイを指差して唾をとばすシャノに、俺はツッコミ要員としての意地から冷静さを取り戻して反論する。
「いや、俺はべつにシャノーラさまのものではないぞ」
「シャノでいいわよ、ばかっ! そんなことより、ちょっとあんたは黙ってなさいっ!」
「はい」
なんだろうな。
さっきからずっと、俺だけ蚊帳の外なんだけれど。
まあ、いいや。
俺はもうしばらく、コーヒーを飲んで気持ちを落ち着かせることに徹しようかな。
うう、まだ口の中が甘いよ。
「ちょっとあんた。そこのおさげ女、あんたいったい何様のつもりよっ!」
ルイルイはシャノを無視してとてとてと俺から離れ、机をぐるっと回ってメイメイの方へ駆けていく。そしてメイメイに抱き着くと、彼女の唇も奪った。
「んむっ!? むむーっ!?」
両手をジタバタさせるメイメイにお構いなく、ルイルイはさっきの俺にやったのと同じようにべろちゅーを敢行する。俺とシャノは絶句して、可愛い女の子がヤバいことになってるその百合的光景を眺める。しばらく、くちゅくちゅと舌と舌が絡み合う音が響いた。
うっわー。こんな卑猥な音、出てたの?
やってるときはわからなかったが、なんてえっちな音たててたんだ。
恥ずかしくなって俺は両手で顔を隠す。
「ぷはっ。ねっ、ルイねぇさんっ。い、いったいなにをっ」
熱い吐息を吐きながら、ようやく解放されたメイメイが自分の姉に抗議した。
するとルイルイは、顔を赤くした妹に抱き着いて頬ずりしながら、シャノに対して『べーっ』と舌を小さく出したのだった。
「なっ、ななっ、なぁっ!? なんなのよ、あの生意気な女はっ!」
俺の胸倉を掴んで前後に揺らすシャノ。
「あー。そういやー、紹介してなかったな。ツインテの方がメイメイ。おさげの方がルイルイ。二人はリアル双子の女子中学生だ。だから、まあ、あんたより年下なんだから、ちょっとは年上らしく優しくしろよな」
「あ、あんなの見せられといて優しくできるかっ! くっ、ちょろいと思ったのに、と、とんだ伏兵じゃないの……。よく見たら、なによあれ。なによあの大きさ。あたしよりあるなんて信じらんない……っ」
シャノは自分の胸を触りながら、ルイルイのそれと比べて言った。いや、まあ、確かに。そんなによく気にして見たことはなかったが、ルイルイの胸の方がシャノのそれよりも大きいような気もするね。
俺がジッと見比べていることに気づいて、シャノがバッと自分の胸を腕で隠した。
「見んな。比べんな。女の子をおっぱいで判断するなんて、サイッテー」
「いや、胸で女の子を判断してねーよ。……つーか、俺はどっちかっていうと胸よりも、お尻派だしな」
「え? ……ははっ! あはははっ! 残念だったなぁ、クソビッチがっ!」
なぜかここで急にメイメイが元気を取り戻した。何か良いことでもあったのかな? チャットオークションでレアアイテムを競り落とせた、とか。
「うっ、あんた。余計なこと言ってんじゃないわよ」
シャノに頭を叩かれる。なんでや。
「ふん。危うく雰囲気に飲まれるとこだったがそうはいかねーぜ? やっぱ、あんたみたいな腹黒女、トーノにはふさわしくねえ。出てってもらおうか」
「あー、やだやだ。お子ちゃまはこれだから。あのねー、相応しいとか相応しくないとか、それはあんたが決めることじゃないでしょ? それは、犬……じゃなかった。トーノ本人が決めることでしょ?」
いまこのクソアマ。俺のこと犬と言わなかったか?
「くっ、う、うるせーっ! 表へ出ろや、クソ女。白黒つけてやっからよ」
「ああ、憐れ! 自分の身の程もわきまえず、この美少女剣士シャノーラさまに挑んでくるなんて。ええ、もちろんいいわ。受けてあげるわ。そっちの黙ってる巨乳娘も一緒にまとめてかかってきなさいよ。ぼっこぼこにしてあげる、あははっ」
高笑いするシャノとメイメイ&ルイルイの間にバチバチと火花が散る。
えー、なんだ。
話にまったくついていけなかったが、どうやら三人でPvPすることになったらしい。
とりあえず、俺は残りのコーヒーを飲み干して、どーすりゃ正解だったのかと頭を抱えるのだった。




