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「オレはこんなアバズレ女、絶対に認めねーからな」
対面に座ったメイメイが腕組みしながら言った。
時は昼過ぎ。ダイニングルーム。
俺、メイメイ、ルイルイ、そしてシャノを交えた昼食を取り終えて、食後のコーヒーを飲んでいる最中だった。これまで一言も発していなかったメイメイが、俺の隣に座っていたシャノを指差して先の台詞を言ったのである。
なんだ、この状況は。お付き合いしている人を両親に紹介しているの図とテロップされていたら、何も知らない人間だったら信じちゃうんじゃないだろうか。
先ほどのメイメイの言葉に、シャノが片眉をぴくっとさせて顔をしかめた。
「はあ? こんな清楚可憐な完璧美少女を捕まえて誰があばずれよ。あんた目、大丈夫?腐ってるんじゃないの? っていうか、さっきから気になってたけど何よ、この男。ずっとあたしを睨んできて。もしかしてあたしに気でもあんの? だったらごめんねー、無理だから。そんな女の子みたいなキャラ作ってるキモ男にシャノーラちゃん、きょーみありませーん」
「お、おと……っ!? オレは女だ、クソがっ!」
「はん、冗談よしてよ」
テーブルをバンと叩いて抗議したメイメイをシャノは鼻で笑う。
「いや、メイメイは正真正銘の女子中学生だぜ」
俺の指摘にシャノは目を見開いた。
「うそ、まじなの?」
シャノはメイメイをまじまじと見つめる。そして、メイメイのある身体のパーツに視線をとめながら、口を開く。
「…………まじなの?」
「どこ見て判断してんだっ! ああ、そうですそうですよぉオレはどーせ貧乳ですよぉーっ! おいトーノっ、絶対やっぱこの女は絶対ダメだかんな絶対っ!」
絶対を三回使ったということは相当メイメイはシャノと馬が合わないということだ。いやでも、初対面でこんだけ嫌悪できるってことは、逆にこれから先、仲良くなれるんじゃないだろうか。ほら、嫌いから始まる好きもあるからね。どーどー。
「へえ、ふうん」
俺がメイメイを手でなだめていると、シャノが片肘をついてこっちをニヤニヤと見てくることに気づく。
「なに」
「あんた、トーノっていうんだ」
ああ。
そういえば、自己紹介しそびれてたよな。
「そういうあんたはシャノっていうんだろ」
「え……、お、覚えていてくれたの?」
頬を赤らめながら視線を俺からそらすシャノに俺は肩をすくめた。
「そりゃあまあ。失禁するところまで見ちゃった女の子だしね」
「忘れろ。ぶっころすぞ」
「はい」
女の子ってすごいな。
すっげー可愛い表情してんなーと思ったら一瞬の変わり身で、影を深く落とした表情になってこっち睨んでくるんだもの。




