表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンガイドさんの仮想現実生活ログ  作者: まいなす
『第1話 ダンジョンガイドさんは迷った』
85/183

3



「………………いたた」


 トーストを齧るたびに痛覚に電流が走る。

 おそらく俺の両の頬にはメイメイの手形がくっきりとまだ残っていることだろう。

 隣で椅子の上にちょこんと三角座りしていたルイルイが、もきゅもきゅと口を動かしながらじっと俺の顔を眺めている。

 あ、こら。

 頬をつままないで、マジで痛いから。


「ふん。テメエがまだ生きていられるのはオレの温情だと思え」


 対面に座るメイメイが、お行儀悪く肘をついてそっぽ向きながらトーストを口に運ぶ。


 メイメイとルイルイはすでに寝間着から、それぞれのジョブに見合った装備に変わっている。【拳士モンク】であるメイメイは、チューブトップ型のレザーアーマーにショートパンツという動きやすさを重視した格好。【治癒士ヒーラー】であるルイルイは、童貞を殺す服の上にフード付きの白いケープを羽織っていた。


 そして、さっきまで二人とも寝ぐせのついた髪を下ろしていたが、今は綺麗にメイメイがツインテール、ルイルイがおさげになっている。それは、どちらもメイメイの手によるものだ。ルイルイの身の回りの世話は彼女が全て行っていた。


「っていうか、ルイちゃんや。俺の頬が痛がってるから、やめたげて」


 いつの間にか俺の膝の上に向き合って座り、両頬をぎゅっとつまんでいたルイルイが首をかしげる。しばらくして、彼女は手をぽんと叩くと、両手で俺の顔を固定した。

 え、なにを。ルイルイの鼻筋の通った童顔が近づいてくる。


 ちゅっ。

 彼女は俺の頬にキスして、さらにはぺろぺろと舐め始めた。


 くすぐったい。俺に年下好きの気質はないが、妙に恥ずかしい。

 や、やめろぉー。

 慌ててメイメイがルイルイを俺から剥がしにかかる。


「ルイねぇさん、めっ! オイこらトーノ、テメェみじんこの分際でオレのルイねぇに何してんだ。今すぐ離れろや」


「いや、俺は何もしてないんだけど」


「黙れ。ルイねぇさん、ってば。こんなごみクズから早く、はーなーれーてーくーれー」


 メイメイがテーブルを足場にしてルイルイの脇を持って引っ張るが、ルイルイは楽しくなってきたのか、きゃっきゃと笑いながら俺に抱き着いて離れない。


「いたい。いたいいたい。」


 メイメイが俺の顔面を蹴り始める段階になって、ようやく飽きたのかルイルイがひょいと俺から離れた。それから彼女は、荒い息を吐く俺とメイメイを放って、ふらふらと店舗スペースの方へと消えていく。自由な子だよなー。本当に。


「ああっ、もう。顔貸せ」


「ん? ああ、ありがとう」


 メイメイが俺の頬についたルイルイの唾液をハンカチでぬぐってくれた。そして彼女はため息を吐くとテーブルの上のお皿を片付け始める。その姿は、まんま母親。中学生にしてこの母性はやばいんじゃないだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ