7
しかし、いつもなら強気に釣り上がってる彼女の目じりも、さすがに今は儚く弱弱しい。しかも今にもこぼれそうな涙が溜まっていた。一方で、金髪おさげでタレ目が特徴でいつもおっとりマイペース天然なルイルイは、このままいくとどういうことになるのかわかってるのか、わかってないのか、普段通りのぽやっとした表情でメイメイにスリスリと頬ずりした。無口な彼女なりに自分の妹を励ましているのだろうか。デキた姉である。
こんなピンチの時でさえ、こんなにも純朴な相互扶助関係が成り立っているデキた姉妹は、そうそういないと思う。もはや絶滅危惧種といっても過言じゃない。本当に二人は仲よしこよーしなんだなー、と俺は再認識したところで、ひとまず彼女たちを安心させるために俺がキマシタヨーということは伝えておかないとな。
ということで、ちょうどメイメイの目じりから溢れ出して頬を伝おうとしていた涙を俺は指で拭ってあげた。
「…………っ!?」
その瞬間、かっと目を見開いてキョロキョロと辺りを見回すメイメイである。が、すぐに自分が不審な動きをしていることに気づいて視線を目の前、すなわち片膝をついて二人を眺めている俺のほうへ固定する。
「……いるの、か?」
小声でメイメイは呟いた。まるで眼鏡を取られた視力の悪い子みたいに目を細めて何かを見ようとしているが、その焦点は俺を通り過ぎている。
例のごとく、こっちが喋っちゃうとせっかくの【インビジブル・ヴェール】の光学迷彩が解けちゃうし、地形への干渉を排除する効果(足跡とか存在の痕跡を残さないメリット効果)もあるため、地面に文字を書いて意思疎通することもできない。となれば、こうするしかねえわけである。
俺はメイメイとルイルイの背後に回る。【インビジブル・ヴェール】発動中はプレイヤーへの攻撃ができないというデメリット効果があるものの、接触ができないわけではない。両利きである俺は左右のひとさし指を同時に彼女たちの背中へ走らせた。
『あとはまかせろ』