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がおー。
文字にするとおおよそ可愛い感じになってしまうが、実際はまったく違う。
『それ』の咆哮は空気だけでは飽き足らず大地さえも震わせて、その存在の顕現を指し示す。
『それ』の名は【ヴァジュラディウス・アルカナドラゴン】といった。
別名は『神雷嵐竜』。愛称『おしおきちゃん』。
簡単に言えば、大きな黒いドラゴン。
一般的な西洋竜のイメージをもとに、無機的な装飾要素も多彩に施されているにも関わらず、無駄なところは一切ないと思えるくらいに洗練されたフォルムは見惚れるほど素晴らしい。
鋭い四肢の爪には幾何学文様の燐光が細部まで創りこまれ、蝙蝠のような翼膜には雷をともなった嵐が纏わりつく。赤褐色の瞳は威厳に満ち溢れるばかりか、どこかしら気品すら感じられるところとか最高じゃないか。
そんな感じで、地獄の獄卒みたいな格好いい頭の角の先っちょから、身の丈以上はある長い尻尾の先っちょに至るまで、それをデザインした神様の手抜き工事がまったく見当たらない。
もはや他の生物を魅了するためだけに創造されたかのようなクリーチャー。俺がもし竜種だったら、あの人間的なごつい前腕に抱かれたいがために、あの厚い胸板に飛び込んでいってしまうかもしれない。オールハイル・ヴァジュラディウス。そうでなくても、いつまでも眺めていたい衝動にかられてしまう。
しかし、それはあまりにもおっかないことである。
ヴァジュラディウスはダンジョン内徘徊モンスターではなく、ダンジョン『間』徘徊モンスター。ダンジョンに潜るとき、ほぼゼロに等しい確率で出現するレジェンダリ級のバケモノなのだ。
表示されているHPは八桁。
HPバーは驚異の五段である。
さらに、ただでさえ全ステータスが全モンスター中トップクラスを誇っている竜種のうちでも、ヴァジュラディウスが属しているのは秘竜種アルカナドラゴン。これはもう、お察しである。
よりにもよって、今、こんなところでコイツにエンカウントしてしまうとは。
まあ、低ランクのダンジョンを爆速周回してレベル上げする高レベル廃プレイヤーに対しての、一種のおしおき救済措置みたいなモンスターではある。そして、俺やハーフヴァンプ少女のレベルが、この【インベルグの密林】に見合っていないことを考えると、少しばかりエンカウント率が上がってしまったことも否めない。しかし、それでもゼロに近いということには変わりないだろう。
なんせダンジョンに潜りまくってる俺でさえ、ヴァジュラディウスにお目にかかれたのはまだこれで五回目。とっても美味しい希少的経験なのだ。コイツを攻略するのは、並みのプレイヤーではまず無理。俺が所属しているギルドのガチパーティー編成(俺、マゼンタさん、ミューさん、ビブリオくん)が万全の状態で挑めば、ようやく何とかなるレベルだろう。
それをよりにもよって、今だなんて。
俺の下で目を見開いて縮こまっている女の子の不運のおかげかもしれない。




