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「絶対やだ」
「ええ、そうよね。シャノーラちゃんがオフ会してあげるって言ってるんだもの。泣いて感謝する以外に断る理由なんてどこにも、……って、はあああああああああああああああああああああああああああっ!?」
素敵なノリツッコミをしたハーフヴァンプ少女は、俺の顔をまじまじと見る。
「ねえ、あんた正気? こんなに可愛い女の子がリアルで会ってあげるって言ってるのよ? 言っとくけど、あんたの人生でこんなチャンス、二度とこないわよ? あ、もしかして、あたしが可愛すぎて気後れしてる? リアルのあんたがどんなレベルかしらないけど、そのパーソナルキャラの容姿レベルだったら、あたしと会話できるスレスレの及第点をギリギリであげてもいいのよ?」
「……あんたのその自分の容姿に対しての絶対の自信と、他人を貶すそのムカつく傲慢さにはもうとっくに耐性できちゃったからスルーして話を続けてあげるけどな。あのねえ。あんたが性根はあんまり悪い人間じゃないということだけは何となくわかったから、忠告しといてやる。仮想現実で昨日今日出会った人間にオフ会しようだなんて、あんた他でも言ってるんなら今後はやめといた方がいいぞ。それこそ出会い厨の絶好のカモだ」
「は? なに言ってんのよ。あたしがそんなに尻軽な女なわけないでしょ。オフ会したいなってあたしが思ったのはあんたが初め、…………っ!? な、ななっ、……なんでも、ない、わ。なんでも、ないわよ。なに、言わせようとしてんのよばか」
自分の台詞を途中でやめてブツブツと呟きながら唇を尖らせるハーフヴァンプ少女に俺はため息するしかなかった。
やれやれ。
「とにかく、この話は終わりにしようぜ。どうせ俺、ギルドメンバー以外とはオフ会しねーし」
「…………けち」
「そんなことよりも、これからどうするかだろ。時間も結構、食っちまった。このまま行くと、俺もあんたも来週期は森の中で起床だぜ。どうするんだ、あんた。俺についてくるって言うなら、今すぐ出発するぞ」
頬を膨らませて拗ねていたハーフヴァンプ少女は小さく舌打ちした。
「仕方がないわね。ついてってあげるわよ」
そこで彼女は立ち上がろうとして膝をつく。しかし――――。
「ぃつッ……っ!」




