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「なななななななな、なんてことをっ、信じらんない信じらんない信じらんないっ! あっ、あああああああ、あんたなんてことあたしにさせるつもりなのよぉっ!」
「俺がさせるんじゃねえよ。【ウッドテンタクル】の粘液にはイカ臭いことの他に利尿作用があんの。それも強力なやつが」
「なっ、なんでそんなっ! ……ぁっ、あうっ……なっ、なななな、なによこれぇっ! いやいやいやいやいやあああああああっ!」
催してきたようだ。
ハーフヴァンプ少女は歯を食いしばり、苦悶の表情で腰をくねらせ始めた。
「我慢しない方がいい。膀胱炎になるぞ」
「うっ、はぁっ、あぅ、う、はぁっ、んっ、うぅううぅ、はぁはぁっ、んぅっ」
ハーフヴァンプ少女は俺の忠告に一瞬何かを言いたそうな顔をしたが、それどころではないらしく口をキュッとつぐんだ。汗ばみながら必死に何かしらと戦ってるようだ。
仕方ない。彼女が出すもの出してしまうまで、俺は何もできないのである。
座りながらダガーナイフを手に遊ぶ。
するとしばらくして。
ようやく我慢の限界に到達したらしいハーフヴァンプ少女から微かな吐息が漏れた。
「ぁ」
それとともに、チョロチョロと湯気の立つ黄金の液体が地面へと落ちていく。
「ぁ……ぁぁ、…………ぅぅ」
ハーフヴァンプ少女は目の前の景色を受け入れられないのか精一杯、顔を背けて泣いていた。そして十数秒後に、ようやく彼女の蛇口が閉じた。その頃にはもう、ハーフヴァンプ少女は廃人のようになってボーっと虚空を見つめるだけになっていた。
なんつーか、憐れだ。果たして彼女の瞳に光が戻るだろうか。
はあ、とため息してから俺はすくっと立ち上がる。それから彼女の手前の地面を眺めた。先ほど彼女から放たれた黄金水が地面に染みをつくっている。
そこか。




