61
「わかった。こうしよう。俺はもう行く。ついてくるなら、黙ってついてくるんだな。それができないなら、どうぞご勝手に。どこへなりとも好きなところへ行けばいい」
「はあ? なによ、その言い方。じゃあ、あたしと本当にここで別れてもいいって言うわけ?」
「その方が助かるね。俺としては。厄介事がなくなって」
「なっ、なによっ。あたしを厄介者扱いしてっ!」
「事実なんだから仕方ないだろ。あと、あまり叫ぶなよ。モンスターが寄ってくるだろ。これ以上、厄介事増やしてどうすんだよ」
「…………な、なによそれ」
一瞬、今にも泣きそうな顔になったように思えたハーフヴァンプ少女だが、すぐに涙を引っ込めてキッと俺を睨みつけてきた。
「なによなによなによっ! もういいわよっ! あんたなんか、こっちが願い下げよっ! こっちから別れてやるわよっ! 言っとくけど、気持ち悪いからついてこないでよねっ!」
「いや、ついてきたのはあんたの方だろうが。あんたが自分で行くっていうなら俺がついていくわけがない。あと、叫ぶなって」
「ふんっ! あんたの顔なんかもう見たくもないわよっ! ばいばいっ!」
「あ、おい」
「……な、なによ。今さら引き留めたって、だめなんだから」
踵を返したハーフヴァンプ少女に声をかけると、彼女は立ち止まってこっちをチラチラ見始める。いや、引き留めるっつーか。一晩を過ごしたよしみなので最後に忠告くらいはしてやらないとなーと思ったのだ。
「行くなら俺の地図をちゃんと見ながら行けよ。教えた通りにな。そうすればあんたのレベルだったら必ず外に出られるから。がんばれよ」
「なっ!? ……ぅっ、…………うぅっ、なによ。なによぉ。もう知らないんだからぁっ!」
どういうわけか俺に背を向けて駆けていくハーフヴァンプ少女の肩はフルフルと震えていた。なんだろうなー。この展開は憑き物がとれた感じですっきりするはずなんだけど、なんだかなー。不安だなー。まるで我が子の初めてのおつかいを見送る父親みたいな気持ちになってしまう。と、ここで気づいた。
あのアマ、俺の地図をまったく見てない。そして彼女が進む方向には確か――――。
「おいあんた。そっちは」
再び俺の声掛けに対して、今度は完全に無視して茂みの中に消えていくハーフヴァンプ少女。
あんのバカムスメが。
そっちは定置型モンスターの巣になってんのに。
ほどなくして、案の定。
きゃーという彼女の悲鳴が耳に入ってきた。
あー、あー、聞こえなーい。聴こえませんよー。
耳をふさいで悲鳴の聞こえた方向に背中を向ける。
きゃー。
「…………くそ。俺はあいつのお守りかよ」
あるいはストーカーか?
どっちにしても彼女の言った通り気持ち悪いのは確かだ。
いや、本当に。
容姿だけドストライクな女の子じゃなかったらとっくに見捨ててるのになー。
舌打ちして俺は彼女のあとを追った。




