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見つけた。
追跡すること二十分。
樹木が少ない開けた場所に出た。
そこでは案の定、ヒューマーの一団が野営の準備をしていた。
その中に俺はスススーっと入り込んで、囚われのお姫様ズを探す。
ヒューマーの人数は十九人。全員男で年齢や体型、レベルや職業、武器や防具は様々であるが、ご丁寧なことに人相のめちゃくちゃ悪い顔つきだけ皆一様である。犯罪度が上がれば上がるほど人相が悪くなっていくのはこの仮想現実の仕様なわけであるが、ありゃ多分、両手の指で数え切れないほど非合法なプレイヤーキルをやってるだろうと推察。話せばわかる相手ではなさそうだ。
「さっさとやりやがれ、おめぇらぁッ! 日が暮れちまうだろうがッ!」
うお、うおお。
フラフラしていると隣でいきなり野獣のようなデカい声が響き渡った。
声の主を見ると、驚愕した。その声主がヒューマーのわりには珍しく、【熱砂の迷宮】のミノタウロス並みに図体がデカかったから驚いたわけではない。人相の悪いこの集団の中でひと際異彩を放つそのゴブリン顔の醜悪さにびっくりしたのだ。いったい何をやらかしたらこうなるんだ。もはや種族の垣根を超えちゃって、骨格から歪んでいるような気さえしてくる。ホラーとかわりと平気なこの俺でも暗がりで突然現れたら、うっかり失神するレベルである。
絶句して立ちすくんでいる俺は置いといて、先の醜悪顔のオッサンの命令にノロノロと野営準備していた男衆が『へ~い』とやる気ねえ返事を口々にする。
どうやら、このゴブリン顔(仮名)がこの集団の首魁らしい。なるほど、納得。この部下たちにしてなおこの上司あり、の典型だなー。あー、やだやだ。
「ちッ、仕方ねえやつらめ。――――終わったら好きしていいぞッ!」
未だトロトロと動く自分の部下にイラついたのか、ゴブリン顔が俺の鼻先をビシッと指さして叫ぶ。すると、途端に耳障りな口笛や甲高い歓声を上げた男たちは、まるで速力倍加魔法【ヘイスト】をかけられたかの如くテキパキと仕事をこなしていくではないか。
俺は頭をかいて、ゴブリン顔の指先から逃れた。そして、ゆっくりと振り返る。
見つけた。
ゴブリン顔が指さした先には手枷を付けられた二人のハーフニンフの女の子が震えていた。