4
足跡である。それも複数。
ひい、ふう、みい。
大まかに数えるとだいたい二十人前後の大所帯である。
膝をついて詳しくそれらを観察してみると、ほとんどがヒューマー(いわゆる現実世界で普通の人間を指す種族)の男性用汎用型レザーブーツの踏跡であるが、ちょうど二人分だけ違うものが混ざっているのに気付いた。やばいな。完全に双子ちゃんズがいつも履いているフェザーブーツだぜ、これ。
状況はだいたい理解した。
困った。
俺はため息を吐く。
拉致られちゃったな、こりゃ。
まだ二人が生きていたことには何よりも喜ばしく安堵したが、また別の問題がわいてくる。敵はモンスターじゃなくプレイヤー。対人戦闘はこちらのスキル相性が良すぎて逆にほとんどのスキルが使えなくなるため、物凄く苦手としている俺である。それに一対一ならばともかく、一対多人数ともなると正直な話、正攻法ではどうにもならない。そもそも俺、ステータスが尖がりすぎてて戦闘向きじゃねーんだよ。だからと言って、ここで尻尾巻いて逃げるという選択肢はない。
やり方は色々ある。
踏みつぶされた草がまだ起き上がっていない。ここを通ったのは三十分ほど前、といったところか。統率のあまり取れてなさそうな動き方をしながら、足跡は密林の奥へと進んでいる。わかっているのか、わかっていないのか、この先直線に進んで少し行くとモンスターのエンカウントしない安地へ到着することになる。そうなればそこで野営する可能性が高いし、そうなると双子ちゃんズの身に危害が及ばされる可能性も高くなる。
急ぐか。
念のため魔法スキル【インビジブル・ヴェール】を発動させて追跡を開始した。