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ぐー。
俺ではない腹の虫の音が響く。出所を想像するのは容易だ。というか、聞かないようにしていたが、さっきから定期的にグーグー鳴ってるしね。そろそろ何か食わないと、状態異常【空腹】になってHPが減少し始めるころだ。
ぐー。
『うう、うぅぅ。…………おなか、へった』
彼女は自分のインベントリを開ける。ここにきて、ようやく何かしら食料を取り出すのかな? そう思って見守っていると、彼女はなんと、HP回復系アイテムの定番である【やくそう】を取り出して、それをひもじそうに食したではないか。
俺は絶句したね。
肉を焼くときの香草なんかに使うならまだしも、それ単体で食っても腹ごしらえなんてできないことはお察しのはず。HPが少量回復する虚しいSE音が俺の耳を通り抜けていく。
『……にがい。のど、かわいた』
まだ状態異常【脱水】にまではならないだろうが果たして……。
ハーフヴァンプ少女はインベントリから今度は【回復薬】を取り出した。これもまたHP回復系アイテムの定番で、フラスコに入った液体だ。見た目はジュースみたいな色をしているが、実際は『良薬は口に苦し』という言葉を体現するかのように滅茶苦茶まずい。その上、飲料アイテムではないので渇きを癒す効果は付与されてない。
それをグビリとやったハーフヴァンプ少女。
『……まずい、うぅ』
回復薬の残りを放り捨てて、不貞寝するように地面に寝転がる。
まさか。
まさかとは思うが、もうそうであるとしか考えられない。
あいつ。
あの女。
あのアマ。
ダンジョンに入るというのに食料や水の類をいっさい持ってきていないらしい。
あの汚いおっさんズでさえ、野営の準備は万全にしていたというのに。




