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…………。イントネーションおかしい。それにハーフヴァンプ少女の引きつった表情によれば、俺の勘繰りは図星なようだ。
こいつ、キルするかどうかはおいといて絶対に俺をボコボコにするつもりだ。
赤い瞳の奥で燃え上がってる復讐の炎がすっごいもん。
もはや、誤解は解けそうにねーなー。そうなってくるとあれだなー。
まーたPvPかー?
ルイルイとメイメイのついで、ではあるが、結果的に汚いおっさんの魔の手から助けることとなった子をキルするのは忍びねーなー。
「というわけで、このカギはこうするのが一番ですな」
ぽーい。
「え? って、はああああああああああああああああああああああああああああっ!?」
明後日の方向へカギを放り投げた俺に、ハーフヴァンプ少女は顎が外れんばかりの声を張り上げた。
「なんてことすんのよぉっ! あんた、なんてことすんのよぉっ!」
「大丈夫大丈夫。そんなに遠くに投げてない。探せばすぐに見つかるさ。ほら、向こうだ。やっぱり、こっからでも見えてるぞ。ほら、あれだ。あんたはカギを自分であそこまで取りに行く。んで、俺はその間にここからサラダバー」
こほん。
「さらばだーって寸法だ」
手を振って後退し、この安地から撤退し始める俺である。
「ちょっ、ちょっと待ちっ、待ちなさっふぎゃ!」
俺を追おうとしておよそ何も無いところで蹴躓き、ステーンと転んで鼻を打つハーフヴァンプ少女。
あー、なんつーか。憐れだ。
「……じゃーな。もう会うこともねえと思うが、お達者でー。あと幸運値ちょっとはあげろよなー」
踵を返した俺は、「ばかーっばかーっばかーっ」という彼女の罵り声を背中に聞きながら、鬱蒼と生い茂る樹木の群れへと紛れ込んでいくのだった。




