23
はあ。
どれだけ一人でダンジョンに潜ったほうが建設的に楽しめることか。
まあ、お金をもらってるから仕方のないことなんですが。
お金。お金かー。
理不尽な気持ちもたちまち鎮めてしまう。
さっすがお金さまである。地獄の沙汰も金的パワー次第というが、仮想現実も金がすべてだというところに変わりはないのかもしれない。つーか、聞きづてによれば、こっちの金を電子マネー感覚で現実世界において取引する輩もいるとか、いないとか。
ASAの闇の深さに身震いを感じる今日この頃。
気を取り直して俺はゴッドヒルトさんに小さく手を挙げて提案する。
「金は用意できたことだし、そんじゃあまあ、解放しろよな。まず鍵をこっちへ。次に金を半分渡す。残りは三人を解放したあとで。おーけー?」
うっっっっっわっ。
妥当な手順を提示したのに鼻で笑われたんですがイラ。
「なぁーにがオーケーだ。バカ言ってんじゃねぇ。金が先だァ。もちろん最初に全部だ。立場わかってんのかァ、ええ?」
「……あー、はいはい。わかってますよー。先に渡せばいいんでしょ。渡せば」
ここまでやっといて金だけ受け取って反故にするような真似はしないだろう。
しないよね。
……しないよ、な?
俺は目の前の汚いおっさんがそこまでのクズではないと信じて、半ば自棄になりながら金を送る。方法は簡単。物品売買システムを使った取引で、ゴッドヒルトさんがべらぼうに高い販売額を設定したアイテムを俺が買うというものだ。
ティロリロリーン。
というわけで、ふぬけたシステム音を聴きつつ、俺はゴッドヒルトさんから装備品『山賊のふんどし』を一千万ゴールドで買った。物理防御+3の追加効果なし。なんというクズスペック。というか、これはリサイクルもできないただのゴミだ。しかもよくよく見てみると耐久値がちょっと削れてるじゃないか。きったねぇ。誰の使用済みだよ。
「もちろん、オレのだぜ?」
フード越しでもわかるのか、俺の嫌そうな顔を察知してゴッドヒルトさんがそう言って嗤った。
おまえか。
まあ、そうでしょうね。そうでしょうよ。




