22
……まずったな。
もう少し、資金繰りに手間取りを見せたほうがよかった。
俺が大金を収集できると知り、調子に乗ってたかるだけたかろうとしてやがる。
でもなー。
そこまで頭が回るなら、なぜもっと想像力を働かせないのか。
これだけの大金を収集できるプレイヤーがヘボなわけはないだろうが。
なにかある。いったい、なんだ?
―――それくらいの、生存本能は備えてほしいもんである。
けれども無いものねだりは仕方がないのだ。いつだって。
バカ野郎の相手をするにはこっちもバカ野郎になるしかない。
俺はゴッドヒルトさんの要望通り、そして今度はちょっと資金繰りに四苦八苦してるかのような演技も織り交ぜつつ、最終的には彼が最初に提示した金額の五倍を用意した。
はあ。
細長いため息を吐いたのはこれからの労働を考えてのこと。
ダンジョンガイドの仕事は実際ものすごく面倒くさいから嫌なのだ。
あ、いや。別にダンジョンに潜るのが嫌いというわけではなく、それはむしろ大好きだ。
現実ではお目にかかれない幻想的なまでに美しい動植物たち。
それらが織りなす神秘的な風景群。
そして現実の物理法則ではありえない自然現象の数々に心奪われることもしばしば。
ぐへへ。
もし雇ってくれたパーティーやらギルドやらの連中がちゃんと他人の忠告を心に留めてくれるような善人ばかりだったら、ダンジョンの魅力を伝えることに尽力しながら喜んで布教活動をしようと思ってる。
けれどもそうは問屋が卸さないのがこの世界の常。
現についさっきまで俺を雇っていたパーティーでも、実力に釣り合わないモンスターに突っ込んでいったナゲーヨさんのせいで、ダンジョン最深部どころか中盤であわや全滅しかけてしまうところだったし。




