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ダンジョンガイドさんの仮想現実生活ログ  作者: まいなす
『第0話 ダンジョンガイドさんは困った』
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 困った。

 というわけで、初っ端の一行目にて章タイトルを回収してしまった俺はため息を吐く。



 事の発端は仮想世界時間で二時間ほど前のことである。


 一昨日(こっちは現実世界時間)のアップデートでマップの更新が入っていた【テルベルグ大霊峰】にガイドポストの仕事依頼がたまたま入っていたため、新マップ開拓ついでの小遣い稼ぎで初見さんたちとパーティー組んで雪山にせっせと潜っていた時のことだった。


 もっと言うなら、出会ったばっかりのパーティーメンバーのうちの一人(確かパーソナルキャラ名はレッドシャドーナパームボンバーベルセルクさん。ジョブは重戦士。ステ振りは筋力重視で典型的な脳筋プレイヤー。見てくれは壮年の渋オヤジだったのに中身は小坊のガキンチョだったみたいで、生意気にも俺の忠告をガン無視して繁殖期のモンスターにちょっかい出した本日の戦犯)が、このダンジョンのネームドモンスターである純白の巨人【イエティー・ハイウルグ】の筋骨隆々とした左フェイントアッパーを食らって盛大に吹っ飛ぶ姿を見上げて「あーあれ死んだなー」と手を合わせた頃合い。


 さらに言うなら、偏りのあるパーティー編成だったせいでたった一人の前衛だったレッドシャドーナゲーヨさんが欠けてしまったという破滅的な状況を理解せず、未だ敵討ちだーなんだーと言い始めるパーティーメンバー全員を「ハイヨーカエレヨー、オマイラカエルガイイヨー」と俺の手持ちの【帰還符】を渡し、このデッドゾーンから撤退させ終え、やっぱ前金で報酬の半分は先に貰っとくべきだったなーと後悔しながら、たった一人ぽつねんとイエティー♂軍団(繁殖期モード)に囲まれてしまった――――ちょうどその時だった。


『たすけて』


 そんなメッセージをギルドチャットの個人宛で受信してしまったのだ。

 送信者がギルドマスターのマゼンタさんだった場合はスルーしていたところだがしかし。確認してみると俺の留守中に雑貨屋『みちしるべ』を切り盛りしてくれているハーフニンフの双子姉妹メイメイとルイルイ、その片割れである胸が薄いほうのメイメイからだった。


 メイメイは俺と話すとき口を開けば語尾に必ず『死ね××(※×印には罵詈雑言が入る)』をくっつけてくる。そんな彼女が『たすけて』だなんて罵り言葉のないナヨいメッセージをよこすなんて。


 『さては惚れたな?』と考えるより、事態がそれくらいに急を要していると考えたほうが現実的だ(ここは仮想現実だけれども)。仕方ない。マップを更新しておきたかったが、可愛い後輩の安否を心配する感情が好奇心と探求心を勝る。


 獲物が減って怒り狂ったイエティーたちが俺に向かって突進してくるのを『お疲れさんでーす』と敬礼しながら【帰還符】を発動させた。


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