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…………きゃ?
それは、酒瓶だった。
ハルバードを振り落とすために踏み込んだハーフヴァンプ少女の右足が、転がっていた酒瓶をものの見事に踏んだのだ。そしてバランスを崩した彼女は魔法スキルを最後の最後で中断してしまった。なので、せっかくの詠唱付き魔法スキルは発動しないまま、魔法陣もキャンセルを受け付けて霧散する。
そこへ。
「ウオオオオオヲヲヲヲヲヲヲヲオオオオオオオオッ!」
まるで漫画の主人公が仲間を救うべく魔王に立ち向かっていくかのような格好いい劇画調の雄叫びをあげたゴッドヒルトさんが、ブロンズソードをハーフヴァンプ少女へ向けて渾身に振るう。
「くっ……」
ガキン。
それに対して体勢を崩した無理な姿勢のまま、ハルバードで受け止めたハーフヴァンプ少女。筋力値の補正があるので、普通ならギリギリのところで受け止めきれるかといったところ、であるが――――。
Critical!
「んなっ!」
おっと。ゴッドヒルトさんの攻撃にクリティカル補正が入ったもよう。ハーフヴァンプ少女のハルバードは頭上高く弾き飛ばされる。彼女にとっては立て続けに不運。だんだん雲行きが怪しくなってきたぞ。
「ちょっ、と、なんなのよもーっ!」
武装解除されたハーフヴァンプ少女は、いったんゴッドヒルトさんから距離をとってからインベントリを開け、予備の武器を取り出そうとした。そこへ、その彼女の頭上へ、先ほどゴッドヒルトさんによって弾かれたハルバードが、まるで何かの意思を持っているかのようにクルクルと回転しながら落ちてきたのだ――――っ!




