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「飽きてきちゃった。そろそろ終わりにするわよっ!」
すると俺の気のない声援が届いたのか、ハーフヴァンプ少女はハルバードを下段に構えて傭兵団終了のお知らせを宣言した。みるみる彼女の得物に黒い渦が纏わりついていく。彼女はMPを大量に消費して間違いなく何かをしようとしていた。そしてその何かとは、魔法スキルか、あるいは体術スキルか。どちらにしても大技なのは疑いない。
「我は闇の寵愛を受けし眷属、ならば闇は来たれり――――」
詠唱を始めたハーフヴァンプ少女が立つ地面に魔法陣が浮き上がる。
魔法スキルか。しかも詠唱付きとは。Bランク以上の魔法スキルにのみ実装されている魔法発動用のパスワードみたいなものが詠唱であるが、それが付いている魔法スキルは大概が全体無差別攻撃系なのである。
やばいなー。どんなに範囲の大きな魔法でも、いまメイメイとルイルイが座っているところまでは届かないだろうが、俺の方は近すぎる。暢気にゴロ寝して観戦するのは止めて、ちょっとここから離れた方がいいなー。そうと決まれば俺は踵を返して脱兎した。相手が全体魔法スキルをしかけてきたときは、とりあえず範囲外に逃れる。PvPの鉄則である。
一方でゴッドヒルトさんもヤバいと思ったのか、慌てて詠唱中のハーフヴァンプ少女へ斬りかかってくのが見えた。こちらもまた、詠唱中は無防備になるので攻撃すべきというセオリー通りの行動だ。しかし、少し遅かったようだ。
「今ここに其の力をもって敵を薙ぎ払い捧げよう。ならば我が問いかけに応えよっ! 光蝕む黙示録の深淵よ、我が手に来たりて敵を穿てっ!」
どうやら詠唱が終わる。
ハーフヴァンプ少女はハルバードを振り上げて複雑奇怪な魔法陣が燐光する地面に振り落とす。
「【マサク・マヴ――――、きゃっ!?」




