表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンガイドさんの仮想現実生活ログ  作者: まいなす
『第1話 ダンジョンガイドさんは迷った』
141/183

57


「顔だけで、悪かったわね。どうせあたしなんか、顔とスタイルだけパーフェクトな性格の悪い女よ。あんたなかんとは全然釣り合わない。じゃあ、どういうふうにすれば、いいのよ。あんたが好きなふうに合わせるから、教えなさいよ」


「はあ? なに急に言ってんだ。んなもん、決まってら。素のままがいい」


「え?」


 きょとんとした顔で固まるシャノ。


「あのねえ。容姿だけ抜群で、あとは最悪なあんたが、俺は、まあ、嫌いじゃないよ。そういうの全部ひっくるめたシャノという人間のことを、俺は嫌いじゃない。つーか、あんた。自分が性格わるいってこと知ってたんだな。じゃあ、口も悪かったことも知ってた?」


 彼女は俺の言葉に、また泣きそうになったが、今度はそれを堪えて笑顔になった。


「…………あはは、バカ。あんたは本当にバカよ、この大バカ。まじできもいから死ね。死んじまえ」


 シャノは笑いながら俺を罵倒する。そうそう。この感じ。シャノのいつもの。嫌いじゃないなー。……でも待てよ。とすると、俺ってもしかしてドMなのでは?


 自分の性癖の疑惑に若干不安になってると、シャノが何やらもじもじしていることに気づいた。


「あ、あのさ。あたし、考えたんだけど」


「なに。もしかして思いついたの? 脱出する方法」


「ううん。そうじゃなくって、ほら。あんたがいくら迷惑かけてないって言ったって、あんただけだったら、あの消えるスキルでいけるんだから。実際あたしが迷惑かけてるじゃない。だから、その、不公平はヤなの。だから、あたしがあんたに、なんかしてあげられることがあればいつでも言っていいわよ。なんでもして、あげるからさ」


「なんでも? おいおい。あんた童貞に何でもしてあげるだなんて言うリスクを考えてねえな。もしここで俺があんたのそのたわわとした胸を揉ませろとかセクハラ言ったらどうするつもりなんだよ、まったく」


「…………げる」


「はあ?」


「だから、もしそれがいいんだったら、も、もませて、あげる……わよって、言ってんの」


「ふうん。じゃあ、俺の下心は頑張らないとな」


「そっ! それにっ! そ、それに、あんたが、もし、それ以上を望むなら……、か、仮にの話よっ? か、仮に、それ以上のことを、あんたがして、ほしいんだったら、……その、…………いいわよ。……あたしは、べつに」


「……それ以上のことってなにさ」


「…………あんた、それ女の口から言わせる気? サイッテー」


 ジト目でこっちを見るシャノに手をヒラヒラと振る。


「いや、俺の童貞脳が勝手にあんたの言葉を都合よくえっちな方向に解釈してんじゃないかなーって思って確認しただけ。でも聞き違いじゃなかったみたいだ。あんたはつまり、俺があんたに十八禁的なことをしてもいいって言ってるわけだ。なるほどね。俺の下心は万歳三唱だぜ、まったく」


「……なによ。言うほど全然うれしくなさそうね」


「嬉しい嬉しい。でもそれはお互い好き合って同意してたらの話だ。確かに俺はあんたのことは嫌いじゃねえよ。顔だけいったらドストライクだ。でも、あんたは違うだろ。そんな助けてやるからヤラせろだなんて、どこの悪徳代官だよ。無理やり一線超えて脱童貞したってまったく嬉しくねえ。むしろ男の恥だ。あんたも、あんただ。そんなに簡単に自分の身体を許すなよな。せっかくここまで処女でやってきたのに台無しだろ。好きなやつのために大事にとっとけよ」


「…………くっ、なによっ。この、ばか、ばか、ばかっ」


 童貞である俺が抱いている理想の愛をせっかく諭してやったのに、それを無下にするかのように俺に何度も肩パンするシャノさん。何か気に障ったのだろうか。


「……あ、そっか。処女ってのは七周期前の話だったっけ? ごめん。まだ仲間みたいな気分で。へえ、よかったな、このリア充め」


「なっ!? に、言ってんのよっ! まっ、まだ処女よっ! ここでもリアルでもずっと処女ですぅっ! って、ななななっ、なにまたヘンなこと言わせてんのよぉ、あんたはぁっ!」


「ふうん」


「…………あ、……へえ。はっはあん。そっか。あんた、うふふ」


 俺の顔をじろじろ見てるなと思ったら、シャノは意地の悪い笑みを浮かべ始めたのである。ついさっきまで弱弱しく泣いていた人間とは思えないくらい、彼女は強気になって俺を蔑んだ目で見下す。


「あんた、いま、ホッとしたでしょ」


 ぎっくーん。


「うふふ、あたしの目は誤魔化せないわよぉー。なーに、あんた。あたしがまだ処女だって知って。あたしがまだ誰か別の男にとられてないって知って、安心したの? ねぇ、安心したんでしょ? うわーキモいんですケドー。あたしがどこの誰と寝ようが、あんたには関係ないでしょ。まあ? あたしが誰かと仲良くしてるとこ、指くわえて見てればぁー? あーもう、想像しただけで憐れよねっ! あたしが誰かとベッドに入ってイチャついてるとこを、あんたは苦しそうに泣きながら後悔して見てるのっ」


 なんかどっかの昼ドラにありそうなドロドロ展開を想像して高笑いするシャノ。

 訂正。やっぱ俺、このクソアマ嫌いだわ。

 俺は首を横に振る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ