50
俺も退避部屋へ一目散に駆ける。
どっちかっていうと、戦闘よりも逃げ足が本業なとこあるからなー。
途中でたちまちクラウソラスを追い抜かし、退避部屋直前まで走ってきていたミミさんを拾って、閉じかけた退避部屋の壁と地面とのわずかな隙間に滑り込んだ。
ギリギリ、セーフ。
どしん、としまった壁を背にして退避部屋に転がりこんだ俺は、手を地面について起き上がる。
むにゅ。
「……むにゅ?」
固い地面を触っているはずである俺の手の平に、すっげー柔らかい感触が。
視線を下に向ける。するとそこには俺が押し倒しているような格好でミミさんが収まっていた。どういうわけか、ミミさんは顔を真っ赤にして俺から目をそらしている。んで、そのまま視線を下方に動かすと、俺の右手が彼女の、手に収まるくらいのちょうどいい胸の上にあることを認めた。いや、正確に言うと、胸の上というか、胸を鷲掴みにしちゃってるというか。
「うわああああああああああああっ!」
我に返って俺は飛び退く。そして今しがた閉じた壁に背をつける。
やっちまった。やっちまったぞ。
はーんーざーいーだー。
罪名は、強制わいせつ罪。
目撃者は退避部屋の中に四人。これはもう、言い逃れできない。
この歳で前科もちになるなんて。しかも、こんな不名誉な犯罪でっ。
いやだー。いーやーだー。
泣きそうになる俺にミミさんはゆっくり上体を起こして言った。
「……もう。トーノくんの、……えっち」
土下座する。土下座した。




