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「私の一番攻撃値の高いスキルだったんだけどな」
ミミさんの尖り耳がしゅんと伏せる。
落ち込むほどではないと思うけどな。いやホント。余波で俺、死ぬかと思ったくらいミミさんの攻撃は十分な威力はあった。やはり、ドラゴスレイヴ属性付与の攻撃でしかダメージは通らないのだろうか。
やつは咆哮すると、まだ炎が散らばる地面を踏み鳴らしながらゆっくりとこちらへ向かってきた。その蛇眼は完全にミミさんのモデルのような肢体をエロオヤジみたくロックオンしている。さっきの攻撃で、完全にミミさんにヘイトが寄っちゃったなー。やっぱり、ピンポイント援護射撃にしてよかった。最初からミミさんがバンバン撃ってたら、さすがに俺の方を見向きもしなくなっちゃってただろう。俺が蠅だとするなら、ミミさんは蚊だ。そりゃあ、刺されたら痒くなる方から潰しますわ。
「そろそろ時間だ。ミミさんからお先にどうぞ。俺の方が走るの早いし、あれをもうちょっとだけ頑張って足止めしてから追いつくよ」
ミミさんは俺の提案に少し考えてから、小さく頷いた。自分の足の速さで、ここから退避部屋まで行く時間を計算して、わりとギリギリだということを確かめたのだろう。
「わかった。トーノくん、おさきに。あと、ごめんね。一回しか援護できなくて」
彼女は律儀に謝りながら退避部屋のある方向へと走り始める。その後ろ姿を眺めながら俺は思う。その一回で俺は命拾いをしたのだ。それは百回の援護よりもずっと価値のある一回だった。あとで、ミミさんに何かお礼を贈らなきゃな。そのためにはまず、ミミさんに向いているヘイトをこっちに戻しとかないと。このままでは、クラウソラスが走ってミミさんを追いかけてってしまう。クラウソラスの速力は俺と比べると高くないが、ミミさんよりかは速い。今、追いかけ始めると、ミミさんが退避部屋に着くまでに追いついてしまう。
クラウソラスにダガーナイフを投げる。しかし、もうそれは意に返さずミミさんからヘイトが変わらなかった。仕方がない。先ほどのクラウソラスとのバトル中、気になったことを試してみるかな。




