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もちろん、その奥の手尻尾攻撃は滞空する俺を射程に捉えている。
やばい。どうしよう。即座にどうやったら九死に一生を得るのか考えてみるもいいアイデアが浮かばない。っていうか、目の前の情景が一気にスローになっている。高速で迫りきているはずであるクラウソラスの尻尾の鱗が鮮明に見えた。遠心力で威力と速度が滅茶苦茶に跳ねあがってるらしく、その鱗は空気との摩擦で鉄を熱したような赤色に変色していた。
うわー、やめろー。
これ、死ぬ一歩手前に人間が見るあれだろー。
そういうのはお呼びじゃないんで、やーめーてー。
その時である。
空気を切り裂く音を聴く。
次の瞬間、幾本もの光の矢がクラウソラスの尻尾に命中した。
赤い閃光が収縮、そして、爆ぜる。
ドン、と音が遅れて地下空間に反響した。
続いて拡散した紅蓮の爆風に吹き飛ばされた俺は、地面に転がって受け身をとって立ち上がる。身体はまだ木っ端みじんにはなっていない。助かった。生きてる。俺はまだ生きてる。助かったーっ。
「余計な援護だった?」
いたずらっぽい笑みを浮かべて、ミミさんが俺に近づいてくる。そんな彼女に無許可で俺は抱き着いた。
「えっ? ええっ!? え、ちょっ、えええっ!?」
「うわっ、あ、ごめん」
すぐさま我に返って彼女から離れる。俺は格好悪いことにも目から出ちゃった涙を拭ってから彼女にサムズアップ。
「あんまり嬉しかったもんだから、つい。ありがとう。ミミさん、グッジョブ」
「……ふふ、どういたしまして」
頬を少しだけ赤くして照れながら、ミミさんは優しい顔で笑う。しかし、すぐさまキリッとした表情に変わってクラウソラスの方を見やると、クールに舌打ちした。
俺も彼女の視線の先を追う。
爆炎の中から図体を現したクラウソラスは無傷だった。
ですよねー。




