12
おっかねーなー。
しかし、なるほど。
俺を置いてけぼりにして事態は進んでいるが、だんだん俺も追いついてきたぞ。
おそらくハーフヴァンプ少女は犯罪者ギルドを排除するクエストを受けたのだろう。
んで、ゴッドヒルトさん以下御一行様はガーディ何某傭兵団の最後の残党である、と。
PvPの喧騒を眺めながら考える。
さすがは余裕ぶっていたのも頷ける。
ハーフヴァンプ少女は手に持ったハルバードを自在に操って、ある時は攻撃をいなし、またある時はおっさんズを吹き飛ばしている。
確かに彼女のステータスはほぼ全て高値で揃っていたし、もともと暗黒騎士は単騎対多数の戦闘が得意なジョブでもある。しかし、ああもハルバードと一体となって舞うように戦うためにはスキルだけに頼らない修練が必要だ。魅せるじゃないか。ハーフヴァンプ少女は戦闘において、圧倒的に汚いおっさんズよりも分がある。現にもうすでに一番レベルの低かった数人のおっさんがHPゲージを赤くして地面に伸びてピクピクしてるし。
本当に殺しちゃいないようだ。
どうやら彼女は悪いやつではなさそうだな。
「あははっ! ああっ、なんて憐れっ! あなたたちみたいなクズイカがこのあたし、美少女剣士シャノーラさまに勝てるわけないじゃないっ! しねっ! しねっ! しねっ! あははっ!」
……悪いやつでは、なさそう、だよな?
ハーフヴァンプは人間とヴァンパイアとの交配種なので、どちらかといえばモンスターよりで好戦的であるが、それはあくまで仮想現実内での設定の話。バトル中でハイになる気持ちはわからんでもないけど、可愛い女の子が汚いおっさんたちを血祭りにしている絵図にイケないサディズムを遠い目で感じる今日この頃である。
しっかし、シャノーラちゃんとか言ったか。俺にとってはナイスタイミングの乱入だ。
姉妹ズの手枷が実体化しているということは、その鍵も実体化されてゴブリン顔がどこかに隠し持っているということである。それを調べてスっちまうには乱戦になってくれた方がやりやすい。
しばらく準備運動をしたのち、俺はすったもんだしてる乱闘のさなかへと突っ込んだ。




