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「えーっと、鮮血(笑)のクロノス……ゴッドヒルトっと。よしっ、ビンゴ! やっぱ、あたしって天才!」
羊皮紙に目を通していたハーフヴァンプの少女は何かを見つけてパチンと指を鳴らして喜んだ。それからバンッとゴッドヒルトさんにハルバードの剣先を向ける。
「クロノス・ゴッドヒルト。こんなド田舎まで逃げちゃって探すのに苦労したわ。さ、大人しく王都まで来てもらうわよー。他のお仲間はみーんな、あたしが牢屋にぶち込んであげたんだから」
「てめぇ、憲兵のまわしもんかッ!?」
「そう、憲兵団にいる友達からクズを掃除してきてって頼まれたの。憐れだわ。悪名高きガーディバティン傭兵団も大したことなかったわね。ぜーんぜん、手ごたえがなかったもの。ひとひねりどころか、片手でひとにぎりよ。肩透かしくらっちゃった。でもまあ、報酬は悪くなかったから差し引きゼロ。チャラにしてアゲル。じゃあまず、さっさとアイテムと装備品をゼンブ捨てて跪きなさいな」
「ふっ、ざけんなッ! てめぇ、この状況がわかってねぇようだなぁオイッ!」
「あははっ! 状況がわかってないのはどっちかしら? いーい? その足りないオツムでよーく考えなさい、おばかさんたち。これからあなたたちにできることは二つに一つ。あたしの命令に従ってぼっこぼこにされるか、それとも命令に従わずにぼっこぼこにされるか。好きな方を選ばせてあげるわ!」
「舐めやがってッ! てめぇら、やっちまえッ! 今夜のおかずに一品追加だッ!」
ゴッドヒルトさんの言葉に汚いおっさんズがゲラゲラと笑いハーフヴァンプ少女へと距離を詰めていく。するとここにきて彼女は初めて不敵な笑みを崩して、肥溜めをほじくる豚でも見るような冷たい視線で汚いおっさんズを見下してハルバードを構えた。
「どうやら、あなたたちは正真正銘のクズのようね。ううん、それだとあなたたちと同列にされたクズに失礼だわ。あなたたちはクズ以下の存在よ。今日からあなたたちは種族クズイカ、名前ゴミ、ジョブは汚物で所属ギルドは掃溜めよ。視界に少しでも入っただけで気持ち悪くて反吐がでるわ。でも、大丈夫よ。殺しはしないわ。プレイヤーキルは趣味じゃないし。でも、それなりに痛い思いはしてもらわなくちゃ、汚されたあたしの眼球が泣いちゃうでしょ。せぇぇぇぇぇぇぇぇ、のッ、【ダークミスト・キルクイトス】ッ!」
ハーフヴァンプ少女は身体を回転させて範囲攻撃を行う。闇属性エンチャントされたその攻撃の余波に巻き込まれた何人かが吹き飛んでHPゲージが削れるのが見えた。




