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「そろそろ行こうぜ」
自己紹介も終わったので俺が立ち上がると、ミカゲちゃんが睨んでくる。
「アンタが指図するな。このパーティのリーダーはユーリさまなんだからな」
ははあん。
俺がユーリくんの方を見ると、彼は両手を合わせてアイコンタクトで謝罪してくる。俺は彼ならばべつに問題ないと判断したので、『どうぞどうぞ』というジェスチャーをして従う。
「えっと、それじゃあ、まずダンジョンに入る前に装備の確認をしよう」
うぃーっす。
それぞれシャノ以外のパーティメンバーが自分たちのインベントリを開けて必要なものがちゃんと持ってきているのかどうか調べ始めた。
「おいそこでボケっとしてる美少女さんや」
シャノに声をかけるが無視される。
「……おいそこでボケっとしている宇宙規模の美少女さんや」
「うん? なによ」
「アイテムの確認のお時間だぞ」
「わかってるわよ。でもあたしには、そんなこと必要ないわ。二度も三度も確認が必要なあんたたちとは違って、あたしにぬかりなんてないもの」
あ、そう。
人間の頭がどんなに不出来なのかわかってないらしい。ダブルチェック以上はしとかないと必ず事故が起こる。知らないぞー。食料や水を忘れたなんて言っても絶対にあげないからなー。
念のため俺は二人分以上の食料と水を持ってきていることを確認した。
「よし。みんな大丈夫かい?」
ユーリくんの声に全員頷く。
「じゃあ、編成についてだけれど。いつも通り前衛は僕とダルマ、後衛にミミとドク。ミカゲは前衛である僕らのサポートをお願いするよ。それからシャノ。キミはどうする?」
「あたしは自由にするわ。前衛でも後衛でも、どっちもいけるもの」
「じゃあ、遊撃で。あと、トーノは? 言っちゃ悪いかもしれないんだけど、その……」
「わかってる。俺はHPが低すぎるからね。それに筋力も防御力もない。戦闘になったらあんた達の邪魔にならないように、後ろの方に下がっとくよ」
「うん。その方がいいよ。その方が僕らも助かる」
ユーリくんは安堵した。おそらく足手まといである俺を守りながら戦わなければならないリスクを危惧していたのだろう。
とここで、ミカゲちゃんが鼻を鳴らした。




