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「へえ、ふうん。そっかそっか」
「……何やらムカつくね、その顔」
「やあねー。あたしって罪な女よねー。こんな童貞にやきもち妬かせるなんてー。言っときますケドぉー、あたしあんたにはこれポチも興味なんてないからぁー。あたしを好きになるなんて恥を知れ、みたいなぁー? 自分の身の程をわきまえろっ、みたいなぁー? ぶっちゃけぇー、好意よせられてもキモくて吐き気を催すからやめてほしいんですケドぉー? くふふっ、あははっ」
こいつめ、キモくて吐き気を催してるわりには、すっげー嬉しそうな良い顔をしてやがる。本当に心が読めないクソアマだなー。それに何か勘違いしているようだし。
「あのね。あんたね。高校で同じクラスに顔がちょっと好みの男はいるか?」
「はあ? うわなに調子にのって、あたしのリアルの情報を聞き出そうとしてんの? 出会い厨キモいんですけど。なに急にあたしに興味持ち始めてんのよ。好きな人間いるかどうかカマ掛けするとかやめてほしいんですけど。ちなみに好きな男とかいないわよ。フリーよ、フリー。だって同じクラス、いえ、学校全体を通してもあたしと釣り合えるくらいのイケメンなんて存在しないもの。そもそも、あたしと釣り合えるくらいのイケメンが地球上に存在しているのかどうかすら怪しいわねー、あっはっは」
「ああ、そう。あんたのその可愛さは宇宙規模なんだな」
「あ、いいわね、そのフレーズ。宇宙規模の美少女。の、あたし。うーん。まだ何かあたしの美貌を形容しきれてないような気がするのよねー。でもまあ、いいわ。妥協したげる。今度から使ってみるわ、宇宙規模の美少女。あんたもたまには良いこと言うじゃないの」
「…………あんたそれ、恥ずかしくないのか?」
「え? なにが?」
コイツ、マジだった。
俺は首を振ってこれからは彼女にこの手の皮肉は通用しないと肝に銘じる。
「じゃあ、好きな男性芸能人はいるか。贔屓にしてるアイドルとかは?」
その問いにシャノはしらばく考えて、俺が生きていた頃にはもう売れっ子になって活躍していた有名アイドルグループのリーダーの名前を言う。テレビで共演した時に優しくしてくれたらしい。
ん、テレビで共演?
なにやら彼女の口からおかしなフレーズが出てきた気もするが、それは聞かなかったことにして深くは突っ込まない。あんまり詮索しない方が得策なのだ。本当に出会い厨だと思われてしまうので。まあ、思われたところでこっちは何をしても会いには行けないわけであるが。
沈んできた気分をまた浮上させるために、ため息をブロー。
「んじゃ、そいつがさ。あんたの目の前で女の子にベタベタしてたら、あんたどう思うよ」
「…………そりゃあ、まあ。良い気分は、……しないかも、ね」
「そう、それ。つまり、そういうことだ。おわかりか?」
「……なんだ。……つまんないの」
唇を尖らせたシャノが俺の頬をギュッとつまんでくる。




