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結論から言うと、そんなことにならずに済みそうだった。
「シャノ以外の僕らは、ここにいるメンバーでパーティを組んでランクBダンジョンを百種類くらいクリアしたよ。挑戦回数は恥ずかしいけど、その五倍くらいはあったかな。だから、もうそろそろランクAのダンジョンに挑戦してもいい頃かなって思って。……だめかな?」
「いやいや。それだけ潜れてりゃ十分だぜ」
不安そうな顔でヒューマーのイケメンくんが俺に尋ねてきたので、心からの笑顔で応対してあげる。
彼は【暗黒騎士】と同じく剣士系ジョブで人気の高い上級職である【円卓騎士】だそうなので物凄く強いということは【分析眼】で見るまでもなく明白である。なのに、誰かさんとはまったく違ったその謙虚な立ち振る舞いに初対面から、とても好感がもてた。
さらに彼のパーソナルネームがユーリくんといって、俺のと語感が若干似ているところも非常に親近感がわく。実際、俺がどのくらいダンジョンに潜ってんのか聞いてみたら先の十分すぎる模範回答である。たぶん彼はRPGやったらボス前でちゃんとレベルをしばらく上げてから挑戦する堅実派だろうと推察。
彼みたいなプレイヤーだったら、俺も安心してガイドできるのになー。
どうしてそうじゃないのかなーと、俺の隣で『ちょっとユーリ、なにそれ自慢? このあたしに自慢するなんて十年早くない?』とブツクサほざいてるシャノを横目で見やる。
ところは【デブリス遺跡大迷宮】の入り口がある場所。
そこはジャングルが唐突に開けた空き地で、足元の地面はびっしりと石が敷き詰められていた形跡が認められ、明らかに人工的な空間であるとわかる。また、荒廃した石柱が円を描くように不規則に何本も立ち並んでおり、中心には白い石碑のようなモノリスが不自然に直立している。
それを遠目に見ながら、石柱の林の外縁部に陣取って俺を含めた七人のプレイヤーたちが集まって、自己紹介し合っていた。




