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………………。
あれ、なんだか面白くなってきたぞ?
生来のいたずらっ子精神に火が付く。いや、最初は勢いで断ってしまったけど。よく考えてみると、誰か知らない人間とダンジョンに潜るのはダンジョンガイドの仕事のときだけで勘弁してくれと思うだけで、シャノの誘いを絶対的に断る明確な理由はないのだ。
今週期は好きにして良いとメイメイからの許しも出てるし。
明日もちょうど暇だったし。
それに嫌な予感はするが、やりがいと達成感のありそうな難クエストだし。
しかも報酬は、なかなかのもんである。
むしろ、多少は知り合いである彼女のパーティに混ぜてもらってクエストに参加した方が得策という考えすら出始めてきていた。
けれども、なんだ。
シャノの仕草が簡単には俺に『うん』とは言わせてくれない。言ってることはムカつくことばかり言ってるはずなのに。彼女の仕草を見ていると、どういうわけか俺の胸のあたりがむずがゆいのである。そして、どういうわけか彼女に、つい反抗したくなっちゃうのだ。
まるで、好きな子に意地悪したくなっちゃうガキみたいだな俺。
…………。
え?
いやいやいやいや。俺は頭を一瞬よぎった自己分析を、首を振って即座に否定する。
確かにこのクソアマ、容姿だけはドストライクだけどそれはありえない。
ないわー。
「もちろん、行かないぜ」
とりあえず墓穴を掘りかねない思考は停止して、シャノに向かってしたり顔でそう言っとく。そんな俺の言葉に、彼女は深く頷いて笑顔になった。
「そうでしょ? やっぱり行くんでしょー。ほんと、あんたって他の男と違って、ぜんぜん素直じゃないんだからー。こーんなに可愛くて最強なあたしとダンジョンに潜れる幸運を噛みしめなさいよー。あはは、まったくもー。まったくもー。……って、あれ? ちょっと待って。聞き違いかしら。あんた、さっき行かないって言った?」
「言ったな。行かないって」
「そう。行かないの。そっか。行かないのかー。へぇ…………って、はあああああああああああああああああああああああああああっ!?」
彼女がノリツッコミすることは予想できていた俺は、自分の耳をちゃっかり指でふさいでいたから鼓膜を痛めることはなかった。それを見た彼女はジト目になって、耳を塞いでいた俺の両手をそっと握ってどかせるのである。
ニコッと彼女はシニカルに笑った。
「って、はあああああああああああああああああああああああああああああっ!」
「ああもうっ! うるさいなぁっ!」
こんなクソアマがー。わざわざノリツッコミ直しやがって。
しかも今度は耳元で叫ばれた。商売道具の一つである俺の聴覚があやうく死んでしまうところだったぞ、おい。俺はシャノを睨む。しかし彼女はどこ吹く風。




