9
――――ズドッ。
しかして、突然の爆発音。
なにゆえ。
バーンッ。
ふたたび破壊音とともに、何人かの男の悲鳴。
そして、この野営地の外周部から中心にいるゴブリン顔へ一直線に駆けていく黒い影。
それはハーフヴァンプの女の子だった。魔法スキルで生成した黒い霧のような鎧をまとっていることから、彼女が魔法剣士系上級職である【暗黒騎士】であることがわかる。お嬢様結びしたアッシュブロンドのロングヘアーをなびかせ、犬歯を見せながら不敵な笑みを浮かべて疾走する彼女の手には、一見しただけでレア度が高いとわかる凝った装飾の施された大型のハルバードがにぎられていた。
ヤル気満々といったご様子であることは間違いない。
やがてゴブリン顔に距離を詰めた彼女はハルバードを振りかぶる。
槌部分には黒霧がまとわりついている。
暗黒騎士の最上級打撃攻撃系魔法スキル【ダークミスト・インパクト】をブッパするつもりだ。
ところがどっこい。
ゴブリン顔も負けちゃいない。
慌てることなく口に含んでいた酒をハーフヴァンプの女の子に向けて噴き出した。
「わわっ! ちょ、ちょっと何すんのよっ! 汚いじゃないっ!」
これは溜まらんと、攻撃モーションをキャンセルして飛びずさって抗議するハーフヴァンプの女の子。その意見には激しく同意である。まあ、PvPであまり褒められたものじゃない汚手である奇襲を仕掛けてきた彼女が言うセリフではないのかもしれないが。
「何をするはこっちの台詞だッ! おめえ、何者んだッ!」
ごもっともなテンプレ台詞を吐き捨てながらゴブリン顔は自分の得物であるブロンズソードを引き抜いた。それに合わせて周りにいた汚いおっさんズも各々の得物を構えて乱入者にタゲった。最低限の統率はあるみたいだ。




