『世界』
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仮想現実オンラインシステム(VROS)『アイン・ソフ・オウル』
通称“ASA”。アメリカ専用第一セフィラサーバー『ケテル』が2030年稼働開始。
人間の物理的な長寿化には限界があったため、意識的な寿命を延ばそうという発想のもとで考案されたバーチャルリアリティー退避型人類延命計画。休眠の必要性のない一部の脳内領域にニューロマイクロマシンを埋め込むことで睡眠中でも疑似思考回路を形成、各種デバイサーにより有機的電気信号を無機的信号に変換し、それを衛星経由で南極大陸にあるASA国別専用セフィラサーバー内にある仮想現実空間へ飛ばす。オンライン可能時間は毎日午前0時から6時までの6時間であるが、ナノマシンによるニューロン活性から対象者は仮想現実内で30日間を過ごすことができる。
初期のアメリカセフィラサーバーでは仮想現実空間内で死亡した場合、何のデメリットもなく蘇生可能であった。しかし、半年とたたないうちにアメリカ国内で死の概念の希薄化および現実と仮想現実の境界の曖昧化が起こり、異常犯罪・凶悪犯罪が急激に増加した。現在では仮想現実世界内で死亡した場合、各サーバーに保存された仮想現実世界内でのパーソナル記憶を全削除し、転生という形で再び初期からパーソナルキャラの育成を始めさせるという手法で対策が行われている。
現在八機のサーバーが絶賛稼働中。
第六セフィラサーバー『ティファレト』
アメリカ、中国、インド、ロシア、欧州に次ぐASA日本専用セフィラサーバー。9つの大陸を有するファンタジー世界風の巨大仮想現実として2035年に稼働開始。魔法や非現実的生物との戦闘というシステムが初めて組み込まれたサーバー。当初からその世界観に人気があったために日本国籍を取得しようとする外国人が殺到し、一時は国際問題にまで発展した。また、稼働前には、仮想現実があまりにも現実と乖離しすぎているため、仮想現実陶酔症候群や現実悲観型無気力症候群などの増加が危惧されたが、WHOの公式発表では有意な増加は認められていないとされる。
各種防犯上の観点から日本国籍を有する1歳以上の人間すべてを対象としてニューロマイクロマシンの埋め込み施術が無償で行われ、午前0時から6時までの6時間は強制的にASAへオンライン状態になる。ただし、やむを得ない場合(育休・産休、医療従事者の夜勤、男女の営み等)は事前申請により許可制で非オンラインの権利を取得できる。夜間外出禁止法、ニューロデバイサー取引法、ASA電波法、定時睡眠法等、関連法案整備済み。