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あとぜき!  作者: あまやま 想
2年目
21/26

一緒に楽しもう!

主人公:山畑つくし

 一二月に入るとどんよりと曇って寒い日が多くなってきた。天気がいい日は北からのからっ風が強く吹きつきた。日が暮れると、風は一層冷たくなり、手袋をせずに自転車に乗ると、ハンドルは痛いほど冷えており、すぐに手がかじかむほどだった。街は少しずつクリスマスのライトアップで華やかになってきた。

 私はひたすら研究室にこもって卒論を書いたり、パソコン画面と集計用紙と先生の顔とのにらめっこの毎日…。そうやって、慌しい毎日がどんどん過ぎていった。来年の一月末の提出期限までに今までのデータを全て集計用紙にまとめ、自分なりの論文を書かないといけない。

 

クリスマスが近づくと成沢先生がこんなことを言い出した。

「来週末はちょうどクリスマスだから、みんなもゆっくりしたいだろう。先生もゆっくりしたい。だから、研究室を閉めますからね」

 私はこのことを武に話した。別に研究室が休みにならなくても、イブの夜は早く研究室を抜け出して、武と二人きりで過ごそうと思っていた。二人でイブの日をどうするか話しているうちに、朝からデートをしようと言う話になった。

「つくっちゃん、映画を見に行こうよ。今、ハリーポッターがとても面白いらしいよ。他にも海猿とかいい映画がたくさんあるけど、どれが見たい?」

「私は海猿が見たいなぁ。それとスケートがしたい。最近、研究室に引きこもりっきりだから体がなまってしまってね…体を思いっきり動かしたかぁ」

「スケートかぁ…。俺、きちんと滑れずにすぐに転んでしまうんだよね。それに小学校のスケート教室以来、もう十年近く滑っていないし…。それよりバッティングセンターに行かない?」

 武はスケートできちんと滑れないようである。彼の顔を見るととても嫌そうな顔をしていた。それを見て少し意地悪をしたくなった。

「だったら、両方しようよ。スケートは私が手取り足取り教えてあげるから、こう見えても私、高校までは年に一回はスケートをしていたから大丈夫だよ。だから、武も私にバッティングを教えてね」

 武はこれを嫌とは言えなかったはずだ。私だって、苦手なバッティングをやると言っているんだから。彼はしばらく考えた末に開き直ったようにこう言った。

「わかった。朝から映画見て、昼からスケートして、それからバッティングセンターに行こう。ついでに二人とも得意なビリヤードもやろう。夜は前もって予約した店で夕食を食べよう。それでいいだろう?」

 私は大きくうなずいた。二人で過ごせる時間はどんどん減っていく。そんな中で私は学生生活最後のクリスマスイブを迎えた。


 イブの朝、私達は渋谷へと向かった。二人で一緒に海猿を見てきた。海上保安庁と言えば、北朝鮮との銃撃戦というイメージが強いが、これを見て海保が少しばかり身近に感じられた。それから、マックで軽く昼食を食べてから、スケート場へと向かった。

スケート場に着くと初めこそ滑ることを嫌がっていた武であったが、何回か私が彼の手を引いて滑っていくうちにコツを思い出したのか、一人でも滑れるようになった。ただ、まだ完全にないから何回か派手に転んでいた。彼は少しやけくそ気味になりながらも小学校以来と言っていたスケートを楽しんでいた。

 スケートが終わると、隣のバッティングセンターに行った。彼はすぐにバッティングを始め、うまく球を打ち返していた。ときどき、思いっきり空振りをするときもあったが、まずまずだったと思う。次に私がバッティングをすることとなった。生まれて初めてのバッティング…。球速が遅い小学生コースでやったけど、バットにボールがまったく当たらない。その後、そこにあるビリヤードを二人で楽しんだ。

 久々にたくさん遊んだ。この頃、ちょうど日が落ちて夕方から夜へと移り変わろうとしていた。そんな中、私達は再び電車に乗った。ちょうど一年前に二人が初めて入った店へと向かっていた。初めは去年と違う店にしようとしたが、店の雰囲気がとてもよかったので今年も同じ店にした。

「つくっちゃん、今日は本当に楽しかったね。それぞれのやりたいことを一緒に楽しむことの大切さをこの一年で学んだ気がする」

 私は武がこのようなことを言うとは思っていなかったので、とてもうれしかった。

「武はこの一年間ですごく大人になったような気がする」

 彼はそんなことはないと言っていたが、これは紛れもない私の本音だった。

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