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あとぜき!  作者: あまやま 想
1年目
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10/26

九州の方言研究

主人公:山畑つくし

 年が明けて、新年気分でいられるのもつかの間。もう大学の講義も再開していた。方研の活動も一五日から再開していて、みんな普通に去年の続きをやっていた。一月は県民性と方言との関連性について、何らかの結論を出すことになっていたので、みんな必死だった。

話は少し戻るが、七日から大学の講義が再開されたので、私は五日に東京に戻ることにした。もちろん、そのことはメールで武にも伝えていた。熊本にいる間、一人でいるときはほとんど武とメールしたり、電話したりしていた。

羽田空港に着くと、武がわざわざ迎えに来てくれていたので、とてもうれしかった。その後、二人で一緒に大学近くにあるそれぞれの家に戻った。夜になると、武が私の家に来てくれた。この一週間、お互いに離れ離れになって、改めて恋人の存在の大きさを知った。この日は私が熊本から買ってきた馬刺しと赤酒を二人でおいしく食べた。もちろん、それだけじゃ足りないので私が簡単な料理を作っておいた。彼はそれらをとてもおいしそうに食べてくれた。そうやって、二人で赤酒を飲み交わしながら、それぞれの一週間を語り合った。

その後、私がタバコを吸っていると武は欲しそうな目で私を見てくる。タバコをねだる彼に私は意地悪を言う。

「タバコと私…どっちが欲しいと? どっちか一つしかあげんよ」

「そりゃ、もちろん、つくっちゃんだよ…。でも…」

 彼はそう言ってピンクのパッケージをじっと見ている。まるで子犬のようだ。私はこの表情が見たくて、つい彼に意地悪をしてしまう。しかし、お預けをやめて彼が欲しがっているものを全て与えたときに見せる幸せいっぱいの顔もいい。だから、結局、タバコも私も彼に与えてしまうことになる。

 そんなことばかり考えていたら、顔がにやけてしまったのか、久々に方研の会合に参加していた唐津先生から注意されてしまった。この日は年が明けてから最初の方研であった。私は香川の方言で女たらしのことを「姫金」と言うことにすごく感心してしまった。これが県民性とどう関係があるのかはよくわからないが…。

 私は熊本出身であるせいか、まず九州から調べてから北へと北上しながら全国を調べていくことが多い。逆に宮城出身の亜紀は東北と北海道を調べてから、南へと南下しながら全国を調べていくことが多いようである。

 福岡は早くから商業が栄えた土地である。その風土が博多どんたくや博多祇園祭などを生み出した。そのことが酒、祭り、おしゃべりが大好きな目立ちたがり屋の県民性につながっている。競馬、競艇、競輪と公営ギャンブルが全てそろっている県は数少ない。

 熊本は北・東・南の三方を山に囲まれており、西も有明海を隔てて島原半島があるため寒暖の差が激しい内陸性気候となった。その気候が「肥後もっこす」と呼ばれる偏屈で頑固で融通がきかない県民性を作り出したとされる。その上、短気で強情で感情的になりやすいため、議論がなかなかまとまらない。これを「肥後の議論倒れ」と言う。

 大分は瀬戸内海に面していることから、瀬戸内地方との結びつきが強い。そのため、大分弁はあまり九州の方言らしくなく、わりと標準語にイントネーションが近い。また、江戸時代に多くの小藩が分立していたため、県の一体感に欠けるところがある。

 佐賀は江戸時代、鍋倉氏が質素倹約を進めていたため、「いひゅうもん」や「葉隠れ」と呼ばれる頑固一徹で几帳面で融通がきかない県民性が生み出されたとされている。そのため、ケチで流行に疎い人が多いとされている。

 長崎は外国貿易、炭鉱、軍港で各地から人が集まってくる歴史があるため、開放的で新しい物好きな性格が形成された。人見知りしないし、格式にこだわらない包容力のある人が多いので、付き合いやすいとされている。

 宮崎は土地が豊かで気候は温暖であるため、根詰めて働く必要もなかった。そのため、温和で素朴のノンビリ屋が多いとされている。積極さに欠けるところはあるが、正直で誠実、真面目な人が多く、楽天的だから付き合いやすいとされている。

鹿児島は「焼酎気質」と呼ばれる熱しやすく冷めやすい気質を持った人が多い。また、保守的で男尊女卑の思想が残っていたり、年長者の影響が強かったりする。金は汚いものという考えが残っているため、金に対する執着心は薄いとされている。

このような事を調べているうちに一月最後の方研の日を迎えてしまった。何も打ち合わせをしなくても、それぞれが自分の出身地を中心に調べてくるので、不思議とうまく全国のデータが集まる。


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