永遠の別離という結末 四話
駆け落ちを明日に控えて俺は親父に
呼び出された。
「お・・・来たか・・・」
親父はすでに酔っ払っている。
「あれ…静江さんは?」
「ああ お出かけ お出かけ~~
とっととお出かけ~~」
「なんかあったのか?」親父のテンションが高くて心配になった。
「いや~なんもない~。
ただ一人暮らしはどんなもんかと思ってな。」
「あ…まだ一人だけど明日彼女が越してくる。」
「そっか。相手の親は・・・ゆるしてくれないんだろ?」
「身分が違うからなんて言われた。
娘にはふさわしくないって……。」
「そっか・・・。ふさわしくはないだろうな。
こんな男が親なんだし……おまえは虐待されて
育てられてきたし…社長様のお嬢様だからな~~~。」
「え?社長様って……?まさかここに……」
「何のめぐりあわせだろうな……俺が今かかってた
取引先の社長なんだな~これが……。
突然取引中止になって何のこっちゃと思えば
表向きは俺らの仕事に納得いかないとか
だけど結局 おまえと娘のことだったんだ。
『取引してくれたら今まで通り…』だってよ。
笑わせんなよな~
会社にも圧力かけて…結局さ
このまま取引を成功させたかったら…
俺をどこかに飛ばせって話で…決着がついたらしいぞ。」
俺は体がわなわなと震えた。
「親父には関係ないのに・・・・・」
「ま…いいさ…俺はおまえに父親らしいこと
してやってなかったしな……。」
「俺はああいう人間が一番嫌いなんだ。
息子とお嬢さんのことですから私はなんにも
口を出しません。息子はしっかりしてますから
苦労させた分って言ってやった。」
「どこに行くんだ?」
「本社勤務から 工場の庶務課に転属されたよ。
今さら定年までもう少しだし
そこで頑張るさ……。
だから今年の学校に提出する用紙には
工場の名前を書いておいてくれ。」
そう言って メモを俺に渡した。
「あれ…親父…これって……」
「気にすんな。長がついてるのかついてないのかの
違いだからな。」
俺は涙が出てきた。
憎かった親父だった……。肉親から受ける暴力にどれだけ
辛い思いをしたことか…
食べることもろくにできないから
給食食べに 学校に通った。
暇だから授業を聞いた。
「俺もさ おまえにいろんなこと
気づかされたよ。
次もまた俺の息子で生まれて来いよ。
今度は大事に育てさせてもらうから……」
「ごめん…とうさん…」
久しぶりだった とうさんって呼ぶの……。
「負けんなよ。障害を超えて二人で幸せになれ。
今さら父親ぶって悪いけれど…
子供は抱かせてくれよ……。」
「うん…うん…ありがとう……。
俺 いい父親になるからね……。」
「俺の分まで頑張れよ。」
親父がこんなに優しい顔で笑うのを俺は
初めて見たんだ。
千夏との出会いによって…俺はどんどん幸せになっている気がして
有頂天になっていた。