永遠の別離という結末 二話
千夏と連絡がとれなくなって俺は不安な日を過ごしていた。
父親が手をかしてくれて 仕事場のそばにアパートを借りた。
居間が八畳で台所が別についていてそれにもうひとつ八畳の部屋がついている。
必要なものは父親が買ってくれた。
「俺の城か・・・・」
ここに一日も早く 千夏を呼んで
千夏の笑顔で朝を迎えて そして夜を迎える…
気が狂いそうだった。
どうしたら連絡がとれるだろうか・・・・・
お腹の子供はどうしているだろうか・…
卒業式が近づいてきたある日
意を決して
千夏の学校の前で待機した。
きっとそこには親の手が伸びているはずだったけど
ここで待つしか手はなかった。
登校時間 多分通るだろうその道で俺は神様に祈りながら
千夏が気づいてくれることを……
親に気づかれないことを……
しばらく待ってたけど 千夏の車は見なかった。
どうしてるんだろう
俺は絶望の中 少なくなってきた登校してくる生徒に
後は 託すしかなかった。
千夏の卒業式が終わって それから二人で駆け落ちしよう。
もしも反対されたらそうしようと二人で決めていた。
昨日 書いてきた手紙には
駆け落ちの待ち合わせ場所と時間を書いて 千夏から借りた本に手紙をはさんだ。
どうか…どうか千夏に届きますように・・・・
向こう側から歩いてきた真面目そうな女子に
それを託した。
怪訝な顔をしたけど
俺が「借りていた本なんです。必ず渡して下さい。お願いします。」と頭を下げると
「わかりました。ちょうど同じクラスだから
間違いなく渡します。」
と言ってくれた。
「あ…ちゃんと学校に来てますか?」
「ちょっと休んでたけど最近は 来てます。
元気ないって噂してます。もしかして…ちーちゃんの彼氏ですか?
どんな人なんだろって……。」
「他の人に…俺のこと言わないでね。
千夏にどうか…渡して下さい。」
女の子はポッと顔を赤らめた。
「わかりました。」
そういって学校に向かって歩いて行った。
俺はその後姿に手を合わせた。
どうか…千夏の手に届いてくれますように……。
その日に向けて俺は 準備をした。
花屋で千夏の好きな アイスバーグの白い花を予約した。
当日 俺はこの花束を抱えて千夏に会いに行くんだ。
この部屋に千夏の笑い声と 赤ん坊の泣き声が
幸せに満ち溢れる日はもうすぐやってくるだろう……。
そんな時 携帯が鳴った。
俺に電話が来るのは めずらしいなと思ってみたら
知らない番号だった。
ためらいながら俺はその電話をとった。