恋の試練 二話
卒業してからも先生は俺の 進路を探してくれた。
定時制の高校に決まってから
昼間 働くところを探した。
なかなか決まらず
先生が一緒に いろいろ足を運んでくれて
少し離れたところで働くのがいいだろうと
隣の市のスーパーでバイトという形で
朝から午後まで働き 通うのはちょっと大変だけど
終わってから学校に行くという生活になる。
何より俺を立ち直らせたのは
収入が入るということだった。
金さえあれば…携帯だって…もしかしたら一人暮らしもできる
千夏のように切り替えて前向きに生きていこうと思ったら
なんだか楽しみになった。
「先生…ありがと…」
「なんかあったら連絡してくれよ。
おまえは俺の可愛い生徒だからな~」
そう言って笑った。
先生のためにもしっかりやらなければと思った。
入学式が済み
千夏との約束の日を迎えた。
今日は来れるかな……
待ち合わせ時間
俺の進路も千夏に伝えたかったから
神様に千夏と会えるように何十回も祈り続けていた。
「にーた~~ん!!!」可愛い声
小さい恵美の手を引いて 満面の笑みの千夏が走ってきた。
会えた
俺は神様にお礼を言った。
そしてすぐに駆け寄って恵美を抱き上げて
そしたら千夏が俺の胸に顔をうずめた。
「会いたかったよ…」
「俺も会いたかった……」
公園のベンチは乾いていてまだ足もとに少し雪が残っている。
俺たちはそこに腰掛けて
おどける恵美を見つめながら
こっそりと指と指をからませた。
「合格したか?」
「うん!!こんたは?」
「俺は…試験では問題なかったけど このまえの騒ぎが
学校がわに知られて不合格だった……」
「え?だって…被害者じゃん…」
「俺のおこないの問題だよ…問題児を入れたくなかったんだって~」
「ひどいわ…今はちゃんと頑張ってんのに……
うちの両親みたいに頭カチンカチンなのね。」
「でもさ~先生が見つけてくれて定時制に通うよ。
昼の仕事も決まったんだ。」
「そうなの~~!?」
千夏は自分のことのように喜んでくれた。
「あ~それじゃ今度から 会いたくなったら
そのスーパーにいけば会えるのね。」そう言って目を輝かせた。
「あ…そうだな~
でもちょっと遠いぞ。汽車に乗って来ないと~~」
「海を見ながら こんたに会いに行くなんて素敵~~
よかったね~~頑張ってね。」
「先生のおかげなんだ…めっちゃ相談に乗ってくれて
俺の進路先決めてくれたから…」
「私も教師になったらそうやって 生徒の心に残る
先生になりたいわ・…」
千夏の夢は 教師だった。
小さい頃に見た ドラマが影響して 絶対先生になるって言ってた。
「そうだな~俺は絶対に先生を忘れないもんな。」
話している間も二人の指は絡み合う。
「一人暮らしするからな~金ためていつでも
一緒にいられるように~」
「うん…そしたらずっとベットの中だね」悪戯っぽく千夏が笑う。
あの夜の出来事を想像して…指だけでも刺激的に感じた。
「一年だけ千夏に遅れちゃうけど…待っててな。」
「うん~待ってるよ。」
恵美が向こう側を見た瞬間 キスを交わした。
どんな短いキスでも 軽い触れ合いでも
俺たちの中では 幸せだった。
「会えない時間はやっぱ…愛育ててくれるんだね……
だってこんなに会うと幸せで
会えるまで好き好きって大きくなるもん……」
「俺もだよ……。
千夏に会うために…俺 生きてるんだと思う……。」
「うれしい…うれしいよ……」
千夏が俺の肩に頭を乗せた。
恵美が走ってきて
「ダッコ」と言ったから膝の上に座らせて
三人で顔を見合って笑った。
「可愛いめぐでも おにーたんは おねーたんのものだからね~」
千夏がそう言うと 恵美は無邪気に
「おにーたん」と言って足をばたつかせて笑った。
「これからは 会いに行くから……
迎えに行くよ~一緒に海見ながら帰ってこようね。」
千夏はそう言って俺の腕に 自分の腕に手をまわした。
「大好きよ…こんたが好きでたまらないの…」
四月の空は 希望の色・・・・・・・。