負けない気持ち 八話
受験の前日 初めて自分が受ける高校へ足を運んだ。
受付で名前を言うと 一瞬受付の生徒たちの顔が変わった。
目配せをして先生が二人 俺のそばにぴったりとついた。
向こうは普通にしている演技をしているが
どう見えても俺が暴れるのを抑え係とも言えそうな若い先生と
絶対柔道部と言えそうなガッチリした先生
ここまで来て俺は何もしないのに…
「お~~!!!アイツか?こんた!!??」
階段の上の方から 声がした。
「溝端 陽之介か?」とりあえず先輩という上級生から声がかかった。
俺はいつもならガンを返すとこだったけど
今はとても穏やかな気持ちでいた。
ニッコリ笑って ペコリと頭をさげた。
「お…お…見たか!!!今 頭さげたぞ!!」
「マジか~~!!??」
見るからに悪そうな奴らがどやどやと俺を見下ろしていた。
同級生の間からも遠目で俺を見てる視線に気がついた。
俺って…そんな悪い奴だと思われてんのか……
今まで人の目なんて怖いこと一つもなかったのに
千夏の親の目を気にしてから これから先付き合うことを禁止なんかされたら
どうしようとか そんなことばっか考えた。
きっと…禁止されるだろうけど…
だからこれからは少しづつでも軌道修正をして
千夏といつか結婚を許してもらえるように頑張ろうとか
考えていたから……。
やっぱ……難しいのか……
金髪を坊主にしても 鏡の中の俺は悪人顔だし……
人の視線は痛いし……
それでも負けない心を持って 前を向いてやる。
今頃 千夏も高校見学してるんだろうな。
もうすぐ会える……。
受験が終わったら・・・・・やっと千夏を抱きしめられる。
「や…あれが…溝端?」
「最悪~~ちゅーかここ受けないでほしい~」
女子の声・・・・・。
傷つくな~
俺は苦笑いをするしかない……。
千夏はよく俺を受け入れてくれたな~
そう思うと千夏に感謝した。
千夏との出会いが もしかしたら俺にいろんなことを気づかせてくれた気がする。
一人の女に出会い 恋をして 恋をされて
そして今までの自分のことを包み隠さず話して
それでも こんな俺でも 愛してくれた。
千夏のためにも 俺はやるぞ
俺は明日にせまった入試に最後の力をぶつけようと誓った。
俺が変わったらきっと 周りも変わる……。
千夏の親に許してもらえるように……
俺の将来に初めて 希望の光を見た気がした。
千夏がいるから 千夏がいてくれるから
俺は千夏の笑顔に感謝せずにはいられなかった。