優しい光 十話
千夏と愛し合うための時間をつくることは難しかった。
俺と千夏は同時に早退をして
千夏の親が忙しいことをいいことに
最初は千夏のおこないがよかったから早退は簡単だった。
学校も親も具合が悪いと思い込んでいた。
俺はもうどうでもいい存在で 親父も関心がないから簡単ではあったけど
その態度が俺をどんどん悪というレッテルに変わって行った。
放課後は恵美がいるから
愛し合わない時は 三人で公園で遊んで
恵美の目を盗んでキスするのが楽しかった。
冬が来て…クリスマスに俺はマフラーをもらった。
うれしかった。
俺には何をあげるものがなくて
親父の金で千夏にプレゼントしたら千夏が汚れてしまう気がして
「キス一杯してくれたらいい…」
千夏と白い雪が舞う夜 何度も何度もキスをした……。
冬休みはまた会えない日が続いて気が狂いそうだった。
千夏のいない人生なんて俺には想像するだけであの 幼い頃虐待を受けてた
あの時よりずっと地獄に感じた。
イライラして 不安で
俺は自分の城で そのうっぷんを喧嘩ではらしていた。
自分の区域にいると俺はいつも狙われていた。
俺の名前をかたり喧嘩をする奴らに何度もまきこまれて
俺には知らないことばっかりだったけど
負けるのはイヤだった。
俺がずっとこの暴力を受けて生きてきたんだ。
おまえらみたいな 反抗期でこんなことやってる奴らに
負けてたまるか!!!
中学生だけじゃない 高校生や 街のチンピラからも狙われていた。
警察からもマークされるようになっていたことに
俺はまだ気づいていなかった。
だからこの区域を出て 千夏に会いに行く時は
ホッとできた。
俺を知らないこの街に癒され…千夏と恵美に癒された。
会えないいら立ちは俺を凶暴に変えて
「会いたいな……」そう叫びながら 敵の腹に拳を突き刺していた……。