優しい光 九話
あのときはままごとにようでも 俺たちには真剣で…
「結婚しような。」
「こんた の奥さんになっておかあさんになるわ。」
「俺はさ~」
千夏に俺の夢を話た。夢なんて今まで無で人生に絶望していたのに
今の俺は夢を大いに語れた。
子供は三人で毎日千夏と子供に いってらっしゃいのキスをして仕事に出かけて
そして夜にはただいまのキスで迎えてもらう。
千夏を愛して 子供を愛して 俺は理想の人生を送る。
千夏となら その夢も絶対に叶いそうに思えた。
まだ子供の俺たちは 夢を現実にするのはたやすいことだと思っていた。
「私のどこが好き?」千夏が聞いた。
「なっちは…俺にとって優しい光なんだ……。
俺を幸せにしてくれるから……俺が夢を見てもいいって思わせてくれたから…」
「うれしいな~私は優しい光なのね……。
こんた の笑顔が好き…無表情だった こんたが…笑うと私はキュンキュンしちゃう…。
それから冷たい唇が好き……キスしたらひんやりして
でも私の唇とどんどん同じ熱さになる…溶け合う気がして
こんたは 私のものになる…。」
「俺の唇って冷たいんだ・・・」
「きっとご飯ちゃんと食べてないからよ…」
ガリガリのあばらを千夏が弾いた。
俺は小さい頃からの話をした。
愛されず育ち なぜか虐待を受けて育ってきたこと……
それがどんなに理不尽で恐怖だったのか
今は暴力はないけれど 居場所と充分な食事もあたえられない
そんなすさんだ家庭に育ってきたと
千夏には素直に話せた。
千夏は大きな目から 真珠のような涙をいくつもこぼして
俺を強く抱きしめた。
「私があいしてあげるから・…こんたを優しい光で包んであげる。
だから…絶対私をお嫁さんにしてね……。」
嬉しくて…俺も泣けてきた。
人の前で泣くなんてカッコ悪いと思ってきたけど
千夏の前では 俺は素直になれるんだ。
朝までいろんな話をして 何度も愛し合った。
俺らは愛し合うたびに 一つなる喜びがどんどん大きくなる。
千夏が
「このまま……つながったまま…ずっといられたら…」
そう甘い声でつぶやく……。
そしてその声を耳にしながら…俺は果てる……。
幸せだった……。
千夏の親の目を盗み 愛し合った。
夢中になりすぎて…俺たちはどんどん坂を転がって不幸が
口を開けて待っていることに気づかずにいた。
二人一緒にいることが…幸せすぎて 何も見えなくなっていた。