七話
「ママ~」
いつものように仕事から帰ってきたママの
手伝いをしながらキッチンに立った。
「学校どう? 慣れた?
カッコいい人見つけた?」
「ううん~ガリ勉が一杯だもん~」
先生のことなんて絶対言えない。
「進学校だからね。高校時代はもう少し我慢して
教育大出て めぐには教職についてもらいたいわ。
おねえちゃんの果たせなかった夢なの。
めぐがやりたいこと見つからないなら
ママもパパも先生になってほしいんだけど…」
小さい頃から聞かされていた。
おねえちゃんの夢を引き継いでほしい
愛されたい私は まだ幼かったから
それを素直に聞いてたけど……
でも…最近は
違うだろ?
と思っている。
またおねえちゃんと私を重ね合わせて……
私を何だと思ってんの?
そうはっきり言えたら どんなにスッキリするだろう。
でも私には言えないんだ……。
両親をガッカリさせたくないから
愛されたいから
「見つからなかったらそうするよ。」って答える。
「おねえちゃんってどうして
そんなに先生になりたかった?」
「子供が大好きでね 小学校の先生になりたいって
小さい頃からの夢だったのよ。
それに向かって頑張ってきたのに……」
ママの顔が曇ってきた。
「あ…おねえちゃんって恋人いたの?」
慌てて話しの方向を変えた。
ママがもっていたスポンジをシンクに
叩きつけた。
え!?
私もママの態度に ビックリして渡そうとしていた
コップを落とした。
「いないわよ!!千夏はそんなチャラチャラした娘じゃないから!!」
あきらかに変なママに私は茫然とした。
しばらく間があって……
「あ…ごめんね…。なんかちょっと思い出して…。
気を悪くした?ごめんね。」
慌ててママは手を洗って
私の頭をいつものように撫ぜた。
「ごめんね~」
「いいよ~大丈夫だよ~」
そう答えながら 私はもっと知りたくなった。
おねえちゃんの恋……
おねえちゃんの死…
そして私の記憶に残るあの人は……
「千夏…死んじゃったのよね…。
みんなみんな あいつのせい……。」
ママの一人言が 呪いの言葉のように聞こえた。
あいつ・・・・・