優しい光 八話
千夏の家は公園から 十分くらいの小高い丘の上にあるらしい。
「坂道きつくね?」
「もう慣れたよ~でもね~もうすぐ引越すんだ。
今度はこの下のほら…あそこに空き地があるでしょ?
あそこに家を建てるんだって。」
大きな道路から二本はいったところに
かなりでかい空き地があった。
「おっきい家が建つんだな~。」
「そうみたい~今の家で充分なのに 大人って見栄を張るから……
あんまりでかいと恥ずかしいんだけど……
どんだけお嬢様?みたいでしょ?
私なんて全然なのに~~」
「ほんとだ~」俺が言うと
「失礼ね~」そう言って俺の背中を押した。
「手つないで……」千夏が言った。
【いいのか?俺…遠慮してたんだけど…
だって…近所に見つかったらまずいだろ?」
「そっか~まずいか~~
うちの親うるさいからな~~」
千夏はふてくされて唇を尖らした。
キス…できるよな…
期待感で妙な汗をかいてきた。
「早く~~~早く~~~!!!」千夏が走り出した。
「待てよ~~」
さすがに毎日登ってる坂道に千夏はびくともしないけど
俺は全然ダメだ。
腹もすいてるし…やっぱ体力ない……。
視界が開けてきて古いけど大きな家が見えてきた。
俺には縁遠い家だなと思った。
玄関に入る時も……俺を家が拒んでる気がした。
俺見たいな男と付き合ってるなんて・・・
親が知ったら 発狂するな~~
金髪の根元が黒くなってきて……
お嬢様の千夏には どこから見てても不釣り合いだから
虐待されて育った人間と
両親に愛されて育った人間
俺たちが結ばれてもいいんだろうか……。
玄関のドアを閉めたら 千夏が抱きついてきた。
「もう誰もみてないから……こんた に一杯甘えていい?
今日はめぐもいないし…めっちゃくっついていいよね?」
俺を見上げた千夏の目が 色っぽくてドキドキした。
その日 俺たちはひとつになった。
初めて同志で 何をどうしたらいいのか なんにもわからないのに
男と女の本能が俺たちを 一つにしてくれた。
「愛してる…大好き…こんたしかもういらない…」
千夏は俺のガリガリのあばらに顔を埋めた。
恥ずかしくなった。
痩せてても腹筋して鍛えないとと思った。
「俺もなっちしかいらない…なっちがいれば何もいらない……」
何度も何度も抱き合ううちに 俺たちはひとつになることが
それぞれに気持ちのいいことだってわかってきた。
さっきまで手さぐりだった行為は…抱き合うたびに
わかりあえて…千夏が甘い声を出すたびに 俺はいっぱしの男になった気がして感動した。