優しい光 一話
俺はどうして生れて来たのだろう……
絶望の中 俺は毎日どうか…どうか…痛くないことを祈って生きてきた。
「コラ~!!テメー何ノロノロ食ってやがる!?」
親父の怒鳴り声 俺は恐ろしくて頭を抱える。
頭を抱えれば腹を蹴られる。
年の離れた夫婦だった。
親父はかなりのじいさんで…母親は若い女だった。
「ほんとコイツ見てるだけでイライラするんだよ!!」
母親のキンキラ声が後に続いて
俺はその日の夕飯をとうとう食えずに違う部屋に入れられる。
俺はこいつらの本当の子供なのか
物心ついた時から疑問だった。
だって自分の子にここまでひどい仕打ちをするものだろうか
いつか本当の親が迎えにきてくれるんじゃないか
そう祈りながら 寒い夜外に出されても必死に空想にひたっていたりした。
絶望したのは こいつらが間違いなく俺の親だったことだ。
逃げ場のない地獄 毎日 毎日 俺は殴られ蹴られ罵られながら生きてきた。
いつか・・・・・きっと・・・誰かが助けてくれる
そう思わないと生きて行く意味さえ失う。
何度か学校の先生が俺の傷を見つけては 報告してくれて
施設にひきとられてだけど
本当の両親ということで また短期間で帰された。
しかし母親が学校から帰ると姿を消していた。
男ができて家を出て行ったと酒に酔った親父が
俺を殴りながらそう言って泣いた。
情けない男だ……俺は絶対こんな男にはならない!!!
中学になって俺の背がいきなり大きくなって 親父と対等な目線になった時
いつものように虐待されていた俺は 自分を守るために親父を投げ飛ばした。
親父の目が鬼のようになり 俺はその後気が遠くなるほど殴られた。
意識が戻った時 俺は悟ったんだ。
力なら俺だって負けないと……。
次に殴られたのは 朝頭が痛くてなかなか起きれなかった朝だった。
「ダラダラしてんじゃねー!!!親父に寝ている脇腹を
思いっきり蹴りあげられた。
俺はもう自分をおさえられなくなっていた。
「ふざけんじゃねーよ」
俺は今までの全ての恨みを親父にぶつけてやった。
「やめてくれよ・・・・」今まで偉そうだった親父はまるで
弱者のように背中を丸めて 怯えた顔で俺を見上げた。
その日から親父と俺の立場は逆転した。
髪の毛を金髪に染めて 眉毛を剃りおとした。
鏡の中に新しい俺が生まれた気がした。
誰にも負けるもんか・・・。
親父はまた新しい女を家に引き込んで 生活を始めた。
だけど もう俺を恐れて暴力をふるうことはなくなった。
居場所はなかったけど それなりに外で時間も潰せるようになって
俺にはもう怖いものは何もなくなった……。
一人で生きて行くために 何をしたらいいのか模索しながら……。