六話
「おねえちゃん……
めぐねぇ…先生探すのめっちゃうまくなったよ。」
話す相手のない恋バナを
微笑むおねえちゃんにしている。
「んでね~今日はやっと
目が合ったの~~~でもほんと一瞬だけどね。
どうしてあの日はずっと見ててくれたのに
最近は私の視線に気づいてくれないんだろう…」
そうなんだ・・・。
私は相変わらず 吸い寄せられるように彼を見つめても
彼は私の視線を そらすようにうつむいた。
「先生ってなんか…悲しい顔してる気がする……。
何かね…何だろ…遠くを見てるの……。
気のせいかな……。
おねえちゃんは恋してた?
彼氏いた?私の覚えてる人はきっと
おねえちゃんの彼氏だよね?
そして雪の日 泣いてた人も……
私は先生に好きになってもらいたい。」
返事のない一方的な 恋バナだけど
それでも話す相手がいるだけでよかった。
「そういえば…おねえちゃんのアルバムとか
どこにあるのかな。」
私はきれいに片づけられたおねえちゃんの部屋をあけた。
ママは毎日 どんな気持ちでこの部屋の掃除を
しているんだろう………。
壁にかけられたたくさんの賞状が優秀さを物語り
読書が好きだった本棚には
あまり興味のない分野の本がびっしり並んでる。
「漫画の方がおもしろいんだけどね。」
一冊の本を手にして パラパラめくっていたら
一瞬 何か書かれていた。
ん!?
私は慎重にそのページまで戻るけど
なかなか開けず
しまいには一枚一枚めくって探した。
あった…!!
そこには
『7時にいつものとこで……
ずっと俺のそばにいてください。
結婚しよう。』
日付は 3月2日 Konta と書かれてあった。
結婚!?Konta!?って彼氏の名前!?
おねえちゃんに結婚を誓い合った人がいたんだ。
でも…でも……おねえちゃんの命日は 3月3日 雛祭りの日……
「めっちゃ…悲恋じゃん…」
その日から私はおねえちゃんの恋を知りたいと思うようになった。