愛の形 八話
「一人で大丈夫?」
「仕方ないよ。仕事でしょ?いつものことだし~」
うちは両親揃って出張に出かけることもある。
今回は大きな契約があるようで 夫婦同伴で出張することになった。
「いつものあなたなら心配しないんだけど……
なんだか…ちょっと心配だわ……。」
私が学校に行ってなかったり不安定だから…それなりに心配してるんだろう…。
「来週から行くから安心して…。」
「ほんとに?」ママが明るい顔になった。
「うん…ごめんね…
もうすぐ冬休みだし…テストもあるし
また気合い入れて頑張るよ……」
両親はホッとした顔をした。
「一泊くらい~どってことないわ。」
できるだけ元気に笑った。
「ひさしぶりに笑った顔みたわ。」
ママが私の頭を撫ぜた。
いつもいい子でいるのは…愛してくれるのを待っているから
おねえちゃんは死んだんだよ……
彼と同じ 両親も…まだおねえちゃんの死を受け入れていないから
大事なことを見失っているんだ。
「いってらっしゃ~い。」いつものように元気に見送った。
そして彼に電話をかけた。
「もしもし…」寝ぼけた声の彼
「恵美です。」
「ん~~どうした?あれ…今何時なんだ?」
完全に寝ぼけている。
「朝の八時です……。」
「今日って土曜だよね……。」
「そうですけど……先生……?」
「サボり魔さん・・・・。久しぶりだな。
学校に来るのを忘れたのかな・・・」
「思い出しました。来週から行きます……。」
「そっか~よかった~」
「先生に渡したいものがあるの。
うちまできてくれますか?」
「家は…マズイだろ……?」
「親は出張なので大丈夫ですから…待ってますから。」
そう言って私は電話を切った。
彼をここに呼ぶ……おねえちゃんの思い出がたくさんつまったこの家に……。