愛の形 四話
「ついたよ。」
無情にも車はいつもの場所についてしまった。
「明日から 俺は先生で 恵美は生徒に戻るから。」
「そんな勝手なこと言わないでよ。
私は…別れたくないもん……。」
「千夏の身代わりはイヤだったんだろ?
恵美がそれを知ってしまったら…俺も
付き合いづらいし……。」
「いやだけど…だけど…
一緒にいたいんだもん……。」
「俺のこと…記憶にある?」
「え…?」
「俺は何度も恵美に会っているよ。」
「夢か現実かわかんない記憶はあるの…。
それがあなただったんだって……。」
「そっか……。
可愛くて小さくて…愛情たっぷり受けて
天使のようだったよ。」
「愛情?そんなのは今は全然感じられないけど?」
「千夏は仕事で忙しい母親の変わりをしてた。
俺と千夏を会わせてくれたのも恵美だった。」
彼はまっすぐ前を向いてそう言った。
「そして…俺と千夏を永遠の別れに導いたのも……」
彼が私の顔を見た時 恐ろしいくらいに
冷たい顔になっていた。
「天使の恵美だった……。」
私はその言葉にスーッと血の気が引いて行くのがわかった。
「どういう…こと……?」
「天使に罪はないんだ……。俺が幼稚だった。
…あの時あの手紙をおまえが
両親の前で読んだんだ。
俺たちが二人で教えて楽しんでいた字を
上手に恵美は読んでしまった。
俺たちを引き裂こうとして 千夏の両親が圧力をかけてきてて
なかなか会うことができなかった。
あの日駆け落ちするのに 予定時間が変更になって……
それをつたえる手立てがなくて…幼稚園の園庭で遊んでた
恵美に千夏に渡してくれと 恵美に託したんだ。
その手紙を見事に読んでしまった。
結局手紙は…千夏には届かなかったんだけどね……。
親に監禁された千夏は
やっとの思いで抜けだしてきて 変更になったとも知らずに
俺を待ち続けて……事故にあった……。」
私が…私が二人を引き裂いたの?