愛の形 三話
「結婚する?どうして?」
「山岸先生とならうまくやっていけそうなんだ。」
「嘘つかないでよ……。」
「ごめんな……。」
「おねえちゃんを忘れられるの?」
「いや…忘れられないよ……。忘れるわけないじゃん……。
俺もあの時 一緒に死んだんだ……。
今 生きてる俺は その死んだ俺のコピーだから…さ
だから…どう生きてもどうでもいいんだ……。
どうせこの世で なっちに会えるわけでもない……
だれを抱いたって…だれにキスしたって…何の意味もない……。
なっちがいないんだから……」
わかっていてもショックは募って行く。
「私は…おねえちゃんの変わり……
でも少しか…私をみてくれたことはある?」
「ないよ・・・。
恵美を抱きながらキスしながら…いつも
千夏とキスしてた。」
「ひどいよ……。
少しくらい私を愛してくれてなかったの?」
「千夏にソックリなんだよ。
この目もあつぼったい小さな唇も……
声も笑い方も泣き顔も…寝顔も全部……」
彼は私を抱きしめた。
「なっち……なっち……愛してる……。」
冷たい唇が私の唇に触れる……。
「なっち……」唇を離して彼が私をそう呼んだ。
悲しくて…涙が流れる……。
彼の唇が首すじを這って……体を覆っていたバスタオルをはいだ。
「なっちをずっと抱きたいって思っていた。」
「キャ…」小さい叫び声をあげて私は慌てて胸をかくした。
「やっと…会えたね…。
夢じゃないよな……なっち………。」
彼はもう私を見ていないと思った。
ここにいるのはもう…私なのに私じゃない
おねえちゃんなんだ。
それでもいい……。
彼に愛されるなら…いいんだ…いいじゃん……
それでいいんだ……。
しかし・・・・・
私の手をどけて彼の唇が 胸の先に触れた時
「やめて~~~~ぇ~~!!!!」と思わず声をあげた。
彼が驚いて私を見つめた。
「やめて~~~ぇ~~私は…恵美だもん………。
うっ……うっ……く……」
悔しくて…痛すぎる………。
嗚咽の私に彼は乾いた下着をはかせて
ブラウスを着せた。
それから崩れかかる私を立たせて……制服を着せて
「行くよ…。」って言った。
「やだよ……。帰んない……。」
ジャンバーをはおって私の腕を掴んだ。
「送って行くよ。」優しい声でそう言うと泣きじゃくる私を無情に
無理やり歩かせて車に乗せた。
「悲しい想いさせてごめん……な…」
彼は一言だけそう言った。
私の泣き声だけが響き渡る車………
「やだ…帰りたくない…別れたくないもん……」
でも…やっぱり辛いのは……私は恵美だから………。