愛の形 一話
「やだから……私は絶対に離れない……。
好きなの…。泣いても別れるって言わないで……。」
彼にしがみついて泣いた。
裸な事も忘れて私は温かい湯船の中で 裸の彼に抱きしめられた。
私の体にかすかに触れる 男の人の部分を感じて
ドキドキしてた。
充分に温まった体ごと彼が抱き上げて
大きなバスタオルを先にソファーに敷いて私を静かに下ろした。
灯りはストーブの赤……。
彼は私から離れてまた浴室に向かって行った。
「抱いて・・・・。」勇気を出して私はいった。
「後悔…するよ…きっと……」
声は向こう側から聞こえた。
「しないよ…絶対に…だって運命だっていったじゃん……。」
「まぁ…ね…。だけど・・・状況は変わるよ…。」
「山岸先生のこと?」
「やっぱ聞いてたんだ。」
「うん・・・・。」
彼は自分の腰の部分にバスタオルを巻いて近づいてきて
私にも
体の上にバスタオルをかけてくれた。
「こうして二人で会った時幸せすぎて…
嫌いって思ったけど…裏切られたって何度も思ってても
好きで好きで死んでしまいそうなの……。
こんなに私を好きにさせたのは…あなたでしょ?」
彼がおねえちゃんのこんただって わかってから
私は彼のことを こんた って呼べなくなっていた。
「ね?誰を見てるの?」私はまたあの時の質問をした。
少し間を置いて
「恵美だよ……。」彼が言った。
「髪の毛短くなったけど…?それでも私を見てる?」
「意味がわからないな…。
どうしてそんなことを聞くんだ?」
「私は恵美だから……もう…身代わりはイヤなの…」
「身代わり?」彼の顔が赤く見える……。
「小山内 千夏 はあなたの愛しい恋人だった……。
私は千夏の妹で……顔がそっくりで……
だから…あなたは…私を見つけたんでしょ?」
初めて彼が動揺した顔をした。
「私はおねえちゃんじゃないよ……。
おねえちゃんの変わりにされて愛されるのは…悲しい……。
あなたが好きなの…おねえちゃんの呪縛から…解放してあげたいの……」
私は彼の手をとって 頬づりをした。
彼の表情がどんどん冷めていく……。
頬に触れた手も……冷たく変わって行く………。