扉 五話
朝 パパのワックスを少々拝借した。
美容師さんが言ってた。
ワックスをもむように こうして……握って…
ちょっとぐちゃぐちゃに見えるけど……こうして…
「いい感じじゃん~~」
鏡の中にいる私は 幼い昨日の私じゃなくて
とっても大人っぽかった。
「めぐ~ママたち出かけるからね~
お弁当作ってあるからね。」 階段の下からママの声
「いってらっしゃ~い」
これで出かける時うるさく言われないよね。
洗面所に行って ママのかみそりと毛抜きを出して
次に眉毛を細くした。
「いた~い…」
毛抜きを使うなんて初めてだったから……
志摩ちゃんのかっこいい眉毛は毛抜きだって言ってた。
抜くたびに痛さでゾクゾクした。
鏡の中の私は……もう新しい恵美が変わっていた。
これでいいんだ……
みんなが悪いんだよ……みんなおねえちゃんが好きだから…
私を愛してくれないから
美容室で見た今どきのお化粧
いろいろおしゃれの勉強もしないと……
キレイになって彼をもっともっと私のこと好きにさせたい
スカートのウエストを二折りにした。
さすがに短いかな……でも…可愛い~
首筋が寒いからちょっと早いけど マフラーをした。
家を出る時は今まで 必ずおねえちゃんに手を合わせたけど
あの真実を知ってから
手をあわせるのは やめた。
ささやかな抵抗。
私のほしいもの何でも持ってるおねえちゃんへの反抗
嫉妬それから…負けたくないって叫び
扉を開く 過去までの私
そしてここから外に出たら…私は変わるんだ。
愛する人を手に入れるために…自分探しをしよう…。