扉 一話
「恵美?どうした?」
私は思わず携帯をバックにしまってキッチンに立ってる
彼の背中に抱きついた。
「いなくなったから…不安だったの…」
「夢でも見たか?」
「うん…怖い夢見たから……」
さっきみた写メは…怖い夢だと思いたかった。
「オムライス?」私は少しでも平静を保とうと話題をそらした。
「好きか?」
「うん!!!すごく大好物のNO5に入ってるの。
こんた お料理できるの?」
「小さい頃から自分で作ってたんだ。
作れる時はいいほうでね~」
玉ねぎのみじん切りもめっちゃ早い
「ん?作れる方?」
「いや~昔のことだよ。
恵美も大好物なんだ……。」
恵美も?
その言葉に 全神経が集中した。
も…って何?
でも今は 怖くて聞けなかった。
頭の中をちゃんと整理して……それからにしよう……。
熱したフライパンに卵を流し込む音に 驚いた。
「恵美は料理とかするのか?」
「するよ~たまに~って私は結構一人だから
めんどくさがらなかったら料理するよ。」
「えらいな。料理はできた方がいいよ。
男の心を掴むから。」
「私は こんた を掴みたい。」
「掴んでるよ?どうして?」
彼がお皿をとりに移動したから 腰に抱きついて一緒に歩いた。
「なんだよ~甘えっ子だな~~」
手際よく皿に盛り付けて 彼がケチャップを私に持たせた。
「好きなだけかけていいよ。」
私は二人のオムライスの上に 赤いハートの模様にケチャップを出した。
「すごいな~ハート型のケチャップだ。」
今度は後から 彼が抱きしめてくれた。
「ね?何を見てるの?」 思い切って口にした。
「恵美を見てるよ……」 髪の毛にキス
「うそつき……」 私はそう言った。
「何で?うそなの?」
「オムライス…見てるくせして……」 明るく笑って見せた。
彼も大爆笑して 私の頬にキスをしてくれた。
「食べようか~~」
涙が出るのをじっとこらえた。
この真実を彼にぶつけたら…すべてが終わってしまうような気がした。
もう少し・・・彼に騙されていよう……。
彼が何を考えているのか…本当は知るのが怖かった。