不安 十話
「寝ちゃったんだ……」
私は飛び起きた。
彼はもうベットにはいなかった。
「こんた?」名前を呼びながら 階段を降りてリビングに行ったけど
彼はどこにもいなくて ソファーのテーブルに書き置きを見つけた。
『ゆっくりしていけるんだろ?
食材 買い出し行ってくるよ』
ずっといていいんだ~
「キャ~!!!やったぁ~~!!!」
私はソファーで飛び跳ねた。
もう一度 書き置きを見て ハッと気づいた。
「あ…この字…どっか……」
なぜか見覚えある字だった。
なんだろう……とてもなつかしい……
考えていると 携帯が鳴った。
マリさんからだった。
「めぐちゃん~今 大丈夫?」
「あ…はい 大丈夫です。」
「この間の友達に詳しく聞いたんだけど こんたの名前呼んだんだけど
一瞬立ち止まったけど…振り向かずに歩いて行ったんだって。
多分 間違いないって言ってた。」
「おねえちゃんのお墓でもちょっとの差だったけど
すれ違ったんです。
おねえちゃんの好きなもの供えてあって…
きっと こんた だと思うんです。」
「うん きっとそうだわ。
すごいね……今でもお参りに来てるのね。」
マリさんはきっと
赤ちゃんのことは知らないんだろう……
そのことは私は言わない方がいいと思った。
「おねえちゃん・・って幸せですね。
どこまで愛されたのかなって……。」
「そうだね…障害の多い恋だったけどね…。
だからきっと…愛が盛り上がったのかもしれないね。」
「私も愛されたいな~って~」
「愛されるよ。めぐちゃんはまだ始まったばっかだよ。
素敵な人にきっと愛されるから~」
「そうですよね…きっと…そうですよね~」
「そうそう~その友達にね 写真写メしてもらったの。」
「え…?ほんとですか?」
「中学の卒アルだって~こんたはこの辺の学校じゃなかったみたいで
いろんなルートで手に入れたらしいよ。
めぐちゃんの想像通りなのか 夢を裏切るのか 私はわかんないけど
私的には めっちゃ~いい~~って感じ!!」
心臓がドキドキしてきた。
おねえちゃんの愛した人
おねえちゃんを愛した人
「じゃあ 電話切ったら送るからね~~
感想聞かせてね~」
マリさんは電話を切った。
しばらくして携帯が鳴って マリさんからの写メが届いた。
私は ドキドキしてそのファイルを開いた。
後から
「ただいま~恵美 起きてたのか?」
彼の声がした。
次の瞬間 時が止まって私は 凍りついた。
「うそ……うそよ……」
思わずそうつぶやいた。
「恵美 今日は特別に俺の特製のオムライスを
作ってやるからな~」
キッチンから彼の優しい声が聞こえた。
なんで……うそだよね……。
なんかの間違いでしょ?
頭の中が 混乱し始めている………。