甘い時 十話
そんな私を
彼は 無表情で私を見つめた。
その表情に私は慌てる……。
「そんなに見ないで…私…軽いわけじゃない…
男の人と付き合ったのは 初めてなのに…だから嫌いにならないで…。」
すがるように 彼の腕をつかんだ。
「送ってくよ。」彼は立ちあがって 下に降りていった。
私は茫然としたまま 部屋でぼーっとしていた。
私には女を感じない…?
そんなに魅力ないのかな………。
ショックだった。
どうして抱いてくれなかったのか 怖くて聞けなかった。
車の中でも 口を聞かなかった。
彼も何も言わなかった……
会話を模索したけど 何も浮かばない……。
沈黙が怖かったのは……
本当の彼の横顔が 冷たく見えたから………。
私に見せてくれる優しい微笑みと 真逆な冷たい横顔……
どっちが本当のあなたなの?
抱いてほしいっていったのは悪いことだったのかな…
「じゃ…また~」
いつもの道で車を停めた。
「おやすみなさい…」
いつでも行ってもいいんだよね?
そう確認したかったけど…聞けなかった。
夢の絶頂から 突き落とされた気分だった。
自分の言動に後悔するだけで
穴に入りたかった。
涙で彼の車が ぼやける……。
彼からもらった 鍵を握りしめた。
甘い幸せにぬくぬくしてた私が一瞬にして 北極にまでふっ飛ばされた様で
彼の車がみえなくなっても 歩き出せなかった。