甘い時 三話
彼に告白してから一カ月がたったけど あれから二人で会ってなかった。
携帯が鳴るたびに落胆を繰り返して…
あれは本当は夢だったのかなって思うくらい寂しかった。
ある日 廊下で怒鳴り声がして 志摩ちゃんと振り返った。
三年生の男子と 彼が言い合いをしていた。
ドッキン…胸が一回おおきく鳴った
「うっせんだよ!!テメーに関係ねーだろーが!?」
男子生徒が教科書を叩きつけた。
「すごいね~三年生ってなんか迫力あるし~
あの先生って素敵だけど…冷たそうだよね。」
志摩ちゃんが言った。
彼が拾って また教科書を彼に手渡そうとしたら
また男子生徒が その教科書を叩きつけた。
「学校やめっからな!!」
志摩ちゃんが「うわ~~すごいね~」と楽しそうにしてる。
私は彼が心配で気が気じゃない……。
「わかった。おまえがそうきめたんならそうすればいい。
ただ…この決断は簡単に決めていいことなのか?
おまえの一生に関わる大切なことだと俺は思う。
場所を変えてでもおまえが 頑張れると言うなら応援するし…
三日 考えろ それでも決意が固いなら
おまえの思うままに決めればいいさ。」
彼の声が 私の心に優しく沁み込んで行く……。
「勉強に集中できる場を与えられるのは幸せだと思うけどな…」
そう言うと 彼は男子生徒を置いて去っていた。
男子生徒は
「うっせんだよ!!!」と言ってうずくまった。
「バカヤロ~~」
いろんな葛藤のある生徒一人一人と向き合うのって 大変だなと思った。
どうして彼は 教師になったのかな…
おねえちゃんも夢が教師だったみたいだけど
私には教師に魅力を感じない……。
このまま将来が決まらなかったら 私も教師になるかもしれない……。
絶対無理だな~
「あの先生 結構いいこと言ってたよね。
あの人きっとやめないよ。」
志摩ちゃんが神妙な顔をしてそう言った。
「うん…。けっこう胸に響いたかもね…。」
私には響いたよ・・・。
早くその声で 甘い言葉囁いて……。
冷たそうなその目が 私を見る時は 優しかった……。
二人っきりの時は きっと私は特別な存在になれるんだ。
彼がもっと…もっと愛してくれるような女の子になりたい…そう思った。